(485字。目安の読了時間:1分) イワンは頭をふりました。 「いいや、わしはもう兵隊はこさえない。」 とイワンは言いました。 「でもお前はこさえてやると約束したじゃないか。」 「約束したのは知っているが、わしはもうこさえない。」 「なぜこさえない、馬鹿!」 「お前さんの兵隊は人殺しをした。わしがこの間道傍の畑で仕事をしていたら、一人の女が泣きながら棺桶を運ん...
(527字。目安の読了時間:2分) タラスは馬車一台に金貨をつみ込んで、商売をしに出かけました。 こうして二人の兄は出て行きました。 シモンは戦に、タラスは商売に。 そして、シモンは一国を平げて自分のものにし、タラスは商売で、たくさんお金をもうけました。 ところで二人の兄弟は逢ったとき、どうして兵隊を手に入れたか、どうして金を手に入れたかを話し合いました。 兵...
(493字。目安の読了時間:1分) タラスはイワンに、こう言いました。 「お前はどこから金貨を手に入れたのだね。資本さえありゃ、おれは世界中の金をみんな手に入れることが出来るんだがな。」 イワンはおどろきました。 そして言いました。 「そりゃ本当かね。なら、もっと早くわしに言ってくれればよかった。わしはお前さんの好きなだけこさえてあげることが出来たに。」 タラス...
(487字。目安の読了時間:1分) 「だがいいかね、わしが兵隊をこさえたらお前さんはすぐつれて行かなきゃいけないよ。兵隊をこっちで養うことになると、一日で村中食いつぶされてしまうからな。」 シモンは、その兵隊をみんなつれて行くことを約束しました。 そこでイワンは、こさえにかかりました。 イワンが一束の麦藁を麦打場へほうり出すと、ぽんと一隊の兵隊があらわれました。 また...
(538字。目安の読了時間:2分) イワンは兵隊たちに、音楽を奏し唄を歌うように言いつけました。 兵隊たちは音楽を奏し、唄を歌いました。 イワンは兵隊に村中を練り歩かせました。 村の人々は胆をつぶしてしまいました。 やがてイワンは(だれにも来てはいけないといって)兵隊を麦打ち場へつれて行きました。 そしてまたもとの藁束にかえて、納屋の中へ入れておきました。 ...
(475字。目安の読了時間:1分) 「何だってそうおばあさんを押すんだ。静かにしろ、そしたらもっとやる。」 と言いました。 そしてまたまきました。 人々はイワンのぐるりを取りまいて拾いました。 イワンは持っているだけ金貨をすっかりまいてやりました。 人々はもっとまけと言いました。 それでイワンは言いました。 「もう何もないよ。今度またまいてやる。さあ踊ろう。...
(519字。目安の読了時間:2分) そして踊りの仲間に入り、女たちに、 「一つ私のために唄を唄ってくれ、そうすりゃ皆が生まれてまだ見たこともないものをやる。」 と言いました。 女たちは大笑いしてイワンをほめたたえる唄を歌いました。 そして唄がすむと、 「さあ、約束のものをおくれ。」 と言いました。 「今すぐ持って来るよ。」 とイワンは言いました。 ...
(516字。目安の読了時間:2分) と小悪魔は言いました。 「いいとも、いいとも。」 とイワンは言いました。 そして、棒で木の枝をこじて、小悪魔をは[#「をは」は底本では「はを」]なしてやって、 「じゃ行け、神様がお前をお守り下さるように。」 と言いました。 イワンが神様の名を口にするかしないかに、小悪魔は水に落した石のように、地べたへ消えてしまいまし[#「し...
(497字。目安の読了時間:1分) ところが小悪魔がその枝にひっかかって、もがいているのを見つけました。 イワンはびっくりしました。 「おやおや、汚いやつめまた出て来やがったな。」 とイワンは言いました。 「いや、ちがうんです。私はあなたの兄さんのタラスについてたんです。」 と小悪魔は言いました。 「だれであろうがかれであろうが、もうだめだぞ。」 とイワンは...
(524字。目安の読了時間:2分) が、今度もやはり同じ目にあいました。 イワンは、その日のうちに百本くらいは伐り倒すつもりでしたが、まだ十本も伐り倒さないうちに日も暮れかかり、疲れてすっかりへとへとになりました。 イワンの身体からは、汗が湯気のように立ちのぼりましたが、それでも休まないで、働きつづけました。 そしてまた他の木を伐りにかかりましたが、急に背中が痛んで来て、...