ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」のブログです

【初めての方へ】ブンゴウメールについて

ブンゴウメールとは?? ブンゴウメールとは、青空文庫の作品を小分けにして、毎朝メールで配信。 気づいたら毎月1冊本が読めてしまう、忙しいあなたのための読書サポートサービスです。 bungomail.notsobad.jp

外科室(22/29)

(311字。目安の読了時間:1分) 一日予は渠(かれ)とともに、小石川なる植物園に散策しつ。五月五日躑躅(つつじ)の花盛んなりし。渠とともに手を携え、芳草の間を出つ、入りつ、園内の公園なる池を繞(めぐ)りて、咲き揃(そろ)いたる藤を見つ。 歩を…

外科室(21/29)

(288字。目安の読了時間:1分) 謂うとき晩し、高峰が手にせるメスに片手を添えて、乳の下深く掻き切りぬ。医学士は真蒼になりて戦きつつ、「忘れません」 その声、その呼吸、その姿、その声、その呼吸、その姿。伯爵夫人はうれしげに、いとあどけなき微笑…

外科室(20/29)

(427字。目安の読了時間:1分) …こに及べるまで、医学士の挙動脱兎のごとく神速にしていささか間なく、伯爵夫人の胸を割くや、一同はもとよりかの医博士に到るまで、言を挟むべき寸隙とてもなかりしなるが、ここにおいてか、わななくあり、面を蔽うあり、…

外科室(19/29)

(322字。目安の読了時間:1分) 「どうぞ」と一言答えたる、夫人が蒼白なる両の頬(ほお)に刷けるがごとき紅を潮しつ。じっと高峰を見詰めたるまま、胸に臨めるナイフにも眼を塞がんとはなさざりき。 と見れば雪の寒紅梅、血汐は胸よりつと流れて、さと白…

外科室(18/29)

(318字。目安の読了時間:1分) 医学士は取るとそのまま、靴音軽く歩を移してつと手術台に近接せり。 看護婦はおどおどしながら、「先生、このままでいいんですか」「ああ、いいだろう」「じゃあ、お押え申しましょう」 医学士はちょっと手を挙げて、軽く押…

外科室(17/29)

(286字。目安の読了時間:1分) 切ってもいい」 決然として言い放てる、辞色ともに動かすべからず。さすが高位の御身とて、威厳あたりを払うにぞ、満堂斉しく声を呑(の)み、高き咳(しわぶき)をも漏らさずして、寂然たりしその瞬間、先刻よりちとの身動…

外科室(16/29)

(322字。目安の読了時間:1分) 単に、医師の命をだに奉ずればよし、あえて他の感情を顧みることを要せざるなり。「綾! 来ておくれ。あれ!」 と夫人は絶え入る呼吸にて、腰元を呼びたまえば、慌てて看護婦を遮りて、「まあ、ちょっと待ってください。夫人…