ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」のブログです

【初めての方へ】ブンゴウメールについて

ブンゴウメールとは?? ブンゴウメールとは、青空文庫の作品を小分けにして、毎朝メールで配信。 気づいたら毎月1冊本が読めてしまう、忙しいあなたのための読書サポートサービスです。 bungomail.notsobad.jp

檸檬(18/23)

(285字。目安の読了時間:1分) 平常あんなに避けていた丸善がその時の私にはやすやすと入れるように思えた。「今日は一つ入ってみてやろう」そして私はずかずか入って行った。 しかしどうしたことだろう、私の心を充たしていた幸福な感情はだんだん逃げて…

檸檬(17/23)

(260字。目安の読了時間:1分) 汚れた手拭の上へ載せてみたりマントの上へあてがってみたりして色の反映を量ったり、またこんなことを思ったり、 ――つまりはこの重さなんだな。―― その重さこそ常づね尋ねあぐんでいたもので、疑いもなくこの重さはすべての…

檸檬(16/23)

(329字。目安の読了時間:1分) そしてふかぶかと胸一杯に匂やかな空気を吸い込めば、ついぞ胸一杯に呼吸したことのなかった私の身体や顔には温い血のほとぼりが昇って来てなんだか身内に元気が目覚めて来たのだった。…… 実際あんな単純な冷覚や触覚や嗅覚…

檸檬(15/23)

(297字。目安の読了時間:1分) 事実友達の誰彼に私の熱を見せびらかすために手の握り合いなどをしてみるのだが、私の掌が誰のよりも熱かった。その熱い故だったのだろう、握っている掌から身内に浸み透ってゆくようなその冷たさは快いものだった。 私は何…

檸檬(14/23)

(269字。目安の読了時間:1分) 私は長い間街を歩いていた。始終私の心を圧えつけていた不吉な塊がそれを握った瞬間からいくらか弛(ゆる)んで来たとみえて、私は街の上で非常に幸福であった。あんなに執拗かった憂鬱が、そんなものの一顆で紛らされる――あ…

檸檬(13/23)

(241字。目安の読了時間:1分) というのはその店には珍しい檸檬(れもん)が出ていたのだ。檸檬などごくありふれている。がその店というのも見すぼらしくはないまでもただあたりまえの八百屋に過ぎなかったので、それまであまり見かけたことはなかった。い…

檸檬(12/23)

(352字。目安の読了時間:1分) もう一つはその家の打ち出した廂(ひさし)なのだが、その廂が眼深に冠った帽子の廂のように――これは形容というよりも、「おや、あそこの店は帽子の廂をやけに下げているぞ」と思わせるほどなので、廂の上はこれも真暗なのだ…