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あっと思うと僕は梅組の教室の中にいました。 僕の組は松組なのに、どうして梅組にはいりこんだか分りません。 飯本先生が一銭銅貨を一枚皆に見せていらっしゃいました。 「これを何枚呑むとお腹の痛みがなおりますか」 とお聞きになりました。 「一枚呑むとなおります」 とすぐ答えたのはあばれ坊主の栗原です。 先生が頭を振られました。 「二枚です」と今度はおとなしい伊藤が手を挙げながらいいました。 「よろしい、その通り」 僕は伊藤はやはりよく出来るのだなと感心しました。 おや、僕の帽子はどうしたろうと、今まで先生の手にある銅貨にばかり気を取られていた僕は、不意に気がつくと、大急ぎでそこらを見廻わしました。 どこで見失ったか、そこいらに帽子はいませんでした。 僕は慌てて教室を飛び出しました。 広い野原に来ていました。 どっちを見ても短い草ばかり生えた広い野です。 真暗に曇った空に僕の帽子が黒い月のように高くぶら下がっています。
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