ブンゴウメール公式ブログ

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2020-07-21

麦藁帽子(21/31)

(607字。目安の読了時間:2分)  或る日曜日、お前たちが讃美歌の練習をしている間、私はお前の兄たちと、その教会の隅っこに隠れながら、バットをめいめい手にして、その村の悪者どもを待伏せていた。 彼等は何も知らずに、何時ものように、白い歯をむき出しながら、お前たちをからかいに来た。 お前の兄たちがだしぬけに窓をあけて、恐ろしい権幕で、彼等を呶鳴りつけた。 私もその真似をした。 ……不意...

2020-07-20

麦藁帽子(20/31)

(578字。目安の読了時間:2分) 私はなんだかお前に裏切られたような気がしてならなかった。  日曜日ごとに、お前はお前の姉と連れ立って、村の小さな教会へ行くようになった。 そう云えば、お前はどうもお前の姉に急に似て来だしたように見える。 お前の姉は私と同い年だった。 いつも髪の毛を洗ったあとのような、いやな臭いをさせていた。 しかしいかにも気立てのやさしい、つつましそうな様子をして...

2020-07-19

麦藁帽子(19/31)

(567字。目安の読了時間:2分) ああ、その手紙に几帳面な署名がなかったら、どんなによかったろうに!……  匿名の手紙は、いつまでたっても、私のところへは来なかった。  そのうちに、夏が一周りしてやってきた。  私はお前たちに招待されたので、再びT村を訪れた。 私は、去年からそっくりそのままの、綺麗な、小ぢんまりした村を、それからその村のどの隅々にも一ぱいに充満している、私たちの去年...

2020-07-18

麦藁帽子(18/31)

(558字。目安の読了時間:2分) 私の同室者たちのところへは、ときおり女文字の匿名の手紙が届いた。 皆が彼等のまわりへ環になった。 彼等は代る代るに、顔を赧(あか)らめて、嘘(うそ)を半分まぜながら、その匿名の少女のことを話した。 私も彼等の仲間入りがしたくて、毎日、やきもきしながら、ことによるとお前が匿名で私によこすかも知れない手紙、そんな来る宛のない手紙を待っていた。  或る日、...

2020-07-17

麦藁帽子(17/31)

(561字。目安の読了時間:2分) しかし、その間、母の方では、私のことで始終不安になっていた。 その一週間のうちに、急に私が成長して、全く彼女の見知らない青年になってしまいはせぬかと気づかって。 で、私が寄宿舎から帰って行くと、彼女は私の中に、昔ながらの子供らしさを見つけるまでは、ちっとも落着かなかった。 そして彼女はそれを人工培養した。  もし私がそんな子供らしさの似合わない年頃に...

2020-07-16

麦藁帽子(16/31)

(577字。目安の読了時間:2分) だから、私はそのことをそんなに悲しみはしなかった。 もしも汽車の中の私がいかにも悲しそうな様子に見えたと云うなら、それは私が自分の宿題の最後の方がすこし不出来なことを考えているせいだったのだ。 私はふと、この次ぎの駅に着いたら、サンドウィッチでも買おうかと、お前の母がお前の兄たちに相談しているのを聞いた。 私はかなり神経質になっていた。 そして自分だ...

2020-07-15

麦藁帽子(15/31)

(552字。目安の読了時間:2分) 気の小さな私はすっかりしょげて、其処から引き返した。 ――私はあとでもって、一人でこっそりと、その井戸端に行ってみた。 そしてそこの隅っこに、私の海水着が丸められたまま、打棄てられてあるのを見た。 私ははっと思った。 いつもなら私の海水着をそこへ置いておくと、兄たちのと一緒に、お前がゆすいで乾して置いてくれるのだ。 そのことでお前はさっきお前の母に...

2020-07-14

麦藁帽子(14/31)

(574字。目安の読了時間:2分) 「こいつを一服したら……」 「まあ!」お前は私と目と目を合わせて、ちらりと笑った。 その瞬間、私たちにはなんだか離れの方が急にひっそりしたような気がした。  せっかくボンボンやら何やらを持って来てやったのに、自分にはろくすっぽ口もきいてくれない息子の方を、その母は俥(くるま)の上から、何度もふりかえりながら、帰って行った。 それがやっぱり彼女の本当の...

2020-07-13

麦藁帽子(13/31)

(566字。目安の読了時間:2分) …… 「どうして僕のお母さんを知っていたの?」「だってあなたのお母様は運動会のとき何時もいらっしってたじゃないの? そうして私のお母様といつも並んで見ていらしったわ」私はそんなことはまるっきり知らなかった。 何故なら、そんな小学生の時分から、私はみんなの前では、私の母から話しかけられるのさえ、ひどく羞かしがっていたから。 そうして私は私の母から隠れるよ...

2020-07-12

麦藁帽子(12/31)

(577字。目安の読了時間:2分) そうしてそれが、砂の中から浮んでいる私の顔を、とても変梃にさせていそうだった。 私はいっそのこと、そんな顔も砂の中に埋めてしまいたかった! 何故なら、私は田舎から、私の母へ宛てて、わざと悲しそうな手紙ばかり送っていた。 その方が彼女には気に入るだろうと思って……。 彼女から遠くに離れているばかりに、私がそんなにも悲しそうにしているのを見て、私の母は感動...

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