(473字。目安の読了時間:1分)
「僕の帽子はおとうさんが東京から買って来て下さったのです。ねだんは二円八十銭で、かっこうもいいし、らしゃも上等です。おとうさんが大切にしなければいけないと仰有いました。僕もその帽子が好きだから大切にしています。夜は寝る時にも手に持って寝ます」 綴(つづ)り方の時にこういう作文を出したら、先生が皆んなにそれを読んで聞かせて、「寝る時にも手に持って寝ます。寝る時にも手に持って寝ます」と二度そのところを繰返してわはははとお笑いになりました。 皆んなも、先生が大きな口を開いてお笑いになるのを見ると、一緒になって笑いました。 僕もおかしくなって笑いました。 そうしたら皆んながなおのこと笑いました。 その大切な帽子がなくなってしまったのですから僕は本当に困りました。 いつもの通り「御機嫌よう」をして、本の包みを枕もとにおいて、帽子のぴかぴか光る庇(ひさし)をつまんで寝たことだけはちゃんと覚えているのですが、それがどこへか見えなくなったのです。 眼をさましたら本の包はちゃんと枕もとにありましたけれども、帽子はありませんでした。
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