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野原はだんだん暗くなって行きます。 どちらを見ても人っ子一人いませんし、人の家らしい灯の光も見えません。 どういう風にして家に帰れるのか、それさえ分らなくなってしまいました。 今までそれは考えてはいないことでした。 ひょっとしたら狸(たぬき)が帽子に化けて僕をいじめるのではないかしら。 狸が化けるなんて、大うそだと思っていたのですが、その時ばかりはどうもそうらしい気がしてしかたがなくなりはじめました。 帽子を売っていた東京の店が狸の巣で、おとうさんがばかされていたんだ。 狸が僕を山の中に連れこんで行くために第一におとうさんをばかしたんだ。 そういえばあの帽子はあんまり僕の気にいるように出来ていました。 僕はだんだん気味が悪くなってそっと帽子を見上げて見ました。 そうしたら真黒なお月様のような帽子が小さく丸まった狸のようにも見えました。 そうかと思うとやはり僕の大事な帽子でした。 その時遠くの方で僕の名前を呼ぶ声が聞こえはじめました。 泣くような声もしました。
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