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真暗に曇った空に僕の帽子が黒い月のように高くぶら下がっています。 とても手も何も届きはしません。 飛行機に乗って追いかけてもそこまでは行けそうにありません。 僕は声も出なくなって恨めしくそれを見つめながら地だんだを踏むばかりでした。 けれどもいくら地だんだを踏んで睨(にら)みつけても、帽子の方は平気な顔をして、そっぽを向いているばかりです。 こっちから何かいいかけても返事もしてやらないぞというような意地悪な顔をしています。 おとうさんに、帽子が逃げ出して天に登って真黒なお月様になりましたといったところが、とても信じて下さりそうはありませんし、明日からは、帽子なしで学校にも通わなければならないのです。 こんな馬鹿げたことがあるものでしょうか。 あれほど大事に可愛がってやっていたのに、帽子はどうして僕をこんなに困らせなければいられないのでしょう。 僕はなおなお口惜しくなりました。 そうしたら、また涙という厄介ものが両方の眼からぽたぽたと流れ出して来ました。 野原はだんだん暗くなって行きます。
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