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もう草原に足がつきそうだと思うのに、そんなこともなく、際限もなく落ちて行きました。 だんだんそこいらが明るくなり、神鳴りが鳴り、しまいには眼も明けていられないほど、まぶしい火の海の中にはいりこんで行こうとするのです。 そこまで落ちたら焼け死ぬ外はありません。 帽子が大きな声を立てて、 「助けてくれえ」 と呶鳴りました。 僕は恐ろしくて唯うなりました。 僕は誰れかに身をゆすぶられました。 びっくらして眼を開いたら夢でした。 雨戸を半分開けかけたおかあさんが、僕のそばに来ていらっしゃいました。 「あなたどうかおしかえ、大変にうなされて……お寝ぼけさんね、もう学校に行く時間が来ますよ」 と仰有いました。 そんなことはどうでもいい。 僕はいきなり枕もとを見ました。 そうしたら僕はやはり後生大事に庇(ひさし)のぴかぴか光る二円八十銭の帽子を右手で握っていました。 僕は随分うれしくなって、それからにこにことおかあさんの顔を見て笑いました。
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