(529字。目安の読了時間:2分) そしてライ麦の刈あとでも、一つの穴を見つけました。 「こりゃきっと仲間によくないことがあったにちがいない。」 と小悪魔は考えました。 「一つおれが代ってあの馬鹿を取っちめなくちゃならないぞ。」 そこで小悪魔は、イワンをさがしに出かけました。 イワンはとうに麦のしまつをして、森で木を伐っていました。 二人の兄たちは、急に人数が...
(494字。目安の読了時間:1分) タラスはイワンを見て言いました。 「おい、もう一度商売が出来るまでおれと家内を養ってくれ。」 「いいとも、いいとも。」 とイワンは言いました。 「よかったら、いつまでもいなさるがいい。」 イワンは上着をぬいで、椅子に腰を下そうとしました。 するとタラスのおかみさんが言いました。 「私はこんな土百姓と一しょに御飯はいただ...
(481字。目安の読了時間:1分) でないと折角のいい麦がだめになってしまう。これをもとの麦束に返す方法を教えてくれ。おれはこれから麦を落そうと思っているんだ。」 そこで小悪魔は言いました。 「それはこうです。 私の家来に命いつける 兵隊よ兵隊よ、 元の藁に飛んでかえれ。」 イワンがこう言うとまた麦の束になりました。 そこで小悪魔はたのみ出しました。 ...
(509字。目安の読了時間:2分) あなたが命令を下しさえすればどんなことでもします。」 「じゃ唄がうたえるかい。」 「ええ出来ますとも、あなたが命令なさりさえすれば。」[#「。」」は底本では欠落] 「よしよし、じゃ一つこしらえてくれ。」 すると小悪魔は、 「じゃ、その麦束を一束取って地べたにつきたてて、こうおっしゃればいいのです。 [#「いいのです。」は底本...
(488字。目安の読了時間:1分) イワンは馬に草をやると、用意して妹と一しょに、ライ麦を運びにやって来ました。 やがて麦束を積みはじめました。 二束ほど車に投げ込んで、三束目を上げようとして熊手をつき込むと、その尖(さき)が、小悪魔の背中へ、突き刺さりました。 熊手をふり上げてみると、その尖にはしっぽの切れた小悪魔が、のがれようとして、しきりに身をもがいて、のたくってい...
(601字。目安の読了時間:2分) イワンが鎌を持って行ってみると、れいのしっぽを切られた小悪魔は先に廻って麦を滅茶苦茶に乱しておいたので、また鎌がつかえなくなりました。 それでイワンは家へ行って、別の鎌を持って来て、それで刈りはじめ、すっかりライ麦を取り入れてしまいました。 「さて、今後は燕麦にかかることにしよう。」 とイワンは言いました。 すると、しっぽを切られた...
(531字。目安の読了時間:2分) イワンは家へ帰って鎌をといでまた草を刈りはじめました。 小悪魔は草の中へもぐり込んで、その鎌の先きを捉えて、切尖を地へ突っ込むようにしはじめました。 イワンは、仕事が大へん骨折れると思いましたが、それでも秣場をすっかり刈りおえて、沼地に入っているところだけ少し残しました。 小悪魔はその沼地へ入り込んで、 「たとえ両手を切り取られたっ...
(514字。目安の読了時間:2分) 彼はそこらあたりをさがし廻りましたが、仲間のすがたはみえないで、ただ一つ小さな穴を見つけました。 「こりゃきっと仲間の上によくないことが起ったわい。するとおれがあいつの代りをしなくちゃならない。この畑はすっかり鋤き返されてしまったから、あの馬鹿をとっちめるにはどうしてもあの牧場だな。」 そこで小悪魔は牧場へ出かけて行って、イワンの秣場に水を...
(509字。目安の読了時間:2分) シモンはイワンを見ると、こう言いました。 「おれはお前と一しょに暮すつもりでやって来たんだが、おれの主人が見つかるまでおれと家内をやしなってくれ。」 「いいとも、いいとも。」 とイワンは言いました。 「どうぞいなさるがいい。」 ところがイワンが長椅子へ腰を下そうとすると、シモンのお嫁さんがその着物の臭いのを嫌って、シモンに、 ...
(505字。目安の読了時間:2分) そして、 「この根を一本だけお上りなさい。これを召し上がればどんな病気だってなおらないことはありません。」 と言いました。 イワンはそれを受取ると、根を一本むしり取って飲みました。 腹痛はそれですぐなおりました。 小悪魔はまた放して下さいとたのみました。 「私はすぐさまこの地の下へ飛込んでしまいます。そして二度と再び出ては参...