(496字。目安の読了時間:1分) とイワンは考えました。 「木の根っこなんて一つもなかったのに、さてはやはりあったんだな。」 イワンは片手を畝へ突っ込んで、探りました。 すると、何かやわらかいものにふれたので、それを引っ掴んで出しました。 見るとそれは木の根のようにまっ黒で、しかも、のたくり廻っているのでした。 それはまぎれもなく、例の小悪魔でした。 「なん...
(534字。目安の読了時間:2分) おれは地面へもぐり込んでその鋤先を捉えた。 が、鋤先にはいい捉えどころがない。 あいつは一生けんめい[#底本では「い」が重複]鋤へ寄っかかる。おまけに鋤先は鋭く切れる。とうとうおれは手を切った。あいつはその畑をほとんど鋤いてしまって、あと小さい畝一つ残しただけだ。兄弟たち、一つ手を貸しに来てくれ。あいつの始末をつけないと、折角の骨折もだいなし...
(551字。目安の読了時間:2分) あいつのよくはいよいよひどくなって行って、何でも見るものごとに買いたくなるように仕向けてやった。それであいつはあり金をすっかりつかってしまい、なおさかんに買い込んでいる。もう大へん借金して買っている。一週間たつとかんじょうの日が来るが、その前に、おれはあいつの買い込んだ品物を、すっかりだいなしにしてやるんだ。するとあいつは支払が出来なくなって、親爺の...
(551字。目安の読了時間:2分) あいつのよくはいよいよひどくなって行って、何でも見るものごとに買いたくなるように仕向けてやった。それであいつはあり金をすっかりつかってしまい、なおさかんに買い込んでいる。もう大へん借金して買っている。一週間たつとかんじょうの日が来るが、その前に、おれはあいつの買い込んだ品物を、すっかりだいなしにしてやるんだ。するとあいつは支払が出来なくなって、親爺の...
(516字。目安の読了時間:2分) 両軍は向い合って陣をとった。ところがおれはその前の晩シモンの陣にある火薬をすっかりしめらせておき、また印度王の方にはかぞえ切れないほどの藁の兵隊をこしらえてやった。するとシモンの兵隊は、その大ぜいの藁兵にとりかこまれて、すっかりおそれてしまった。シモンは打てと命いつけた。ところが鉄砲も大砲も弾丸が出なかった。そこでシモンの兵隊はおびえて羊のように逃げ...
(508字。目安の読了時間:2分) そしてあいつ等を仲たがいさせるまでは決して帰って来るな。でないとお前たちの生皮を引むいでしまうぞ。」 小悪魔たちは早速ある沼地へ行って仕事について打合せをしはじめました。 そしてめいめいが一番割りのいい役を取ろうとしてぎろんしました。 が、とうとうくじ引で役割を決めることにしました。 そしてもし一人が先に片づいたら他へ手伝いに行くこ...
(526字。目安の読了時間:2分) 二 ところが、それを年よった悪魔が見ていました。 悪魔は、兄弟たちが財産の分け方でけんかをするだろうと思っていたのに、べつにいさかいもなく、仲良く別れて行ったので大へん腹を立てて、早速三人の小悪魔を呼び集めました。 そして言いました。 「ここに兵隊のシモン、肥満のタラス、馬鹿のイワンと言う三人の兄弟がいる。こいつらは...
(531字。目安の読了時間:2分) そこでやはり父親のところへ出かけて行き、 「私にも私の分け前を下さい。」 と言いました。 しかし父親はタラスにも分けてやりたくなかったので、 「お前は、何一つ家へは持って来なかった。この家にあるものは、みんなイワンがかせぎ上げたのだから、どうしてあれや娘によくないことが出来よう。」 と言いました。 が、しかしタラスは言いまし...
(521字。目安の読了時間:2分) そこでシモンは父親のところへ行って言いました。 「お父さん、あなたはお金持なのに私にはまだ何もくれませんでした。あなたの持ちものを分けてその三分の一を私に下さい。そうすりゃ私の領地の手入をすることが出来ますから。」 すると年寄った父親は言いました。 「お前は家のためになることを何もしたことはない。それにどうして三分の一やることが出来よ...
(507字。目安の読了時間:2分) 一 むかしある国の田舎にお金持の百姓が住んでいました。 百姓には兵隊のシモン、肥満のタラスに馬鹿のイワンという三人の息子と、つんぼでおしのマルタという娘がありました。 兵隊のシモンは王様の家来になって戦争に行きました。 肥満のタラスは町へ出て商人に[#底本では「に」が重複]なりました。 馬鹿のイワンと妹のマルタは...