ブンゴウメール公式ブログ

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2021-02-11

絵のない絵本(42/59)

(787字。目安の読了時間:2分) そして紡車をながめました。それからすぐに、かわいらしい素足が一つ寝床から出てきました。またもう一つが出てきました。こうして小さな脚が二本現われました。コトリ! 男の子は床の上に立ちました。男の子はもう一度振り向いて、父親と母親が眠っているかどうかをたしかめました。たしかに、ふたりとも眠っています。そこで、小さな短い寝巻のまま、ぬき足さし足こっそりと紡車のとこ...

2021-02-10

絵のない絵本(41/59)

(726字。目安の読了時間:2分) ――やがて、角笛のひびきはだんだん弱くなっていきました。そしてそのたえだえの音を、尼僧院の鐘がかき消してしまいました。――」 [#改ページ] 第二十四夜  月が話したことを聞いてください。 「いまからもう何年も前のことです。このコペンハーゲンで、わたしはあるみすぼらしい部屋の中を窓ごしにのぞきこんだことがあります。父親と母親は眠っていましたが、小さい息子はま...

2021-02-09

絵のない絵本(40/59)

(747字。目安の読了時間:2分) 』そうして、いろいろと思いだしているうちに、 『ああ、そうだっけ』と、女の子は言いました。『あたし、足に赤いきれをつけてた、かわいそうなアヒルを笑ったことがあったわ。あんなおかしなかっこうをして足をひきずるんですもの、あたし笑っちゃったんだわ。だけど、生き物を笑うなんていけないことだわね』こう言いながら、女の子はお人形のほうを見上げました。 『あんた、生き物...

2021-02-08

絵のない絵本(39/59)

(784字。目安の読了時間:2分) それは、ほんとうにかわいい、きれいなお人形でした。もちろん、この世の中で不幸な目にあうように生れてきたわけではありません。ところが、この小さい女の子の兄さんの、大きい男の子たちがお人形をひったくって、庭の高い木の上にのせると、そのまま逃げて行ってしまったのです。  小さい女の子はお人形のところまで行くこともできないし、お人形をおろしてやることもできません。そ...

2021-02-07

絵のない絵本(38/59)

(746字。目安の読了時間:2分) この人たちは、人の通ったことのない道でも敵の種族に出会いませんでした。嵐も起りませんでした。旅行く人々を死にたやす砂柱も、この隊商の上にはまき起りませんでした。家では、美しい妻が夫や父のために祈っていました。 『あの人たちは死んだのでしょうか?』と、わたしの金色の半月にむかって、美しい妻はたずねました。『あの人たちは死んだのでしょうか?』と、わたしのこうこう...

2021-02-06

絵のない絵本(37/59)

(794字。目安の読了時間:2分) ゆるやかにのぼって行く雲の上に、月はまるく明るく輝いていました。 月がわたしに話してくれたことをお聞きください。 「アフリカのフェザン地方のある町から、わたしは隊商の後について行きました。砂漠の手前にある岩塩平原の一つで、隊商は立ちどまりました。そこは氷の表面のようにきらきら光っていて、わずかのところだけ軽い流砂でおおわれていました。いちばん年上の男は腰帯に...

2021-02-05

絵のない絵本(36/59)

(745字。目安の読了時間:2分) そして下のほうに、わたしの輝く光をいっぱいに受けて、この小さい少女が出てきました。頭の上には水のはいった古代風の粘土のかめをのせていました。見ればはだしで、短いスカートも、小さいシュミーズの袖もきれていました。わたしはその子の美しいまるい肩と、黒い眼と、まっ黒なつやつやした髪の毛にキスをしてやりました。少女は家の前の階段をのぼってきました。階段は急で、石壁の...

2021-02-04

絵のない絵本(35/59)

(799字。目安の読了時間:2分) 車を走らせている御者がただひとりそばにいるだけで、ほかにはだれもついていませんでした。月のほかにはだれも。墓地の塀の近くの片隅に、自殺者は埋められました。そこには、やがていらくさがはびこることでしょう。墓掘りの男はほかの墓から抜き取ったいばらや雑草を、そこに投げすてることでしょう」 [#改ページ] 第二十夜 「ローマから、わたしは来ました」と、月が言いました...

2021-02-03

絵のない絵本(34/59)

(749字。目安の読了時間:2分) ――  この芝居が終ったとき、わたしはひとりの男がマントにくるまって、階段をこっそり降りて行くのを見ました。それはほかならぬ、さんざんにやっつけられたその晩の騎士でした。道具方の男たちは、ひそひそ話しあっていました。わたしはこの罪人のあとについて、この男の家の部屋までのぼって行きました。  首をつるのは見ぐるしい死に方だ。そうかといって、毒薬はいつも手もとに...

2021-02-02

絵のない絵本(33/59)

(773字。目安の読了時間:2分) かつては、この廊下には身分の高い貴族しか足を踏み入れることができなかったものです。  深い井戸からか、それとも溜息の橋のそばの牢獄からか、一つの溜息が聞えてきます。そのむかしには、色あざやかなゴンドラの上でタンバリンの音がひびき、婚約の指輪が輝かしい総督の船ブーチントロから海の女王アドリアへ投げこまれたのです。アドリアよ、おまえの身を霧の中につつみなさい! ...

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