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――やがて、角笛のひびきはだんだん弱くなっていきました。そしてそのたえだえの音を、尼僧院の鐘がかき消してしまいました。――」 [#改ページ] 第二十四夜 月が話したことを聞いてください。 「いまからもう何年も前のことです。このコペンハーゲンで、わたしはあるみすぼらしい部屋の中を窓ごしにのぞきこんだことがあります。父親と母親は眠っていましたが、小さい息子はまだ眠ってはいませんでした。そのとき、寝台のまわりの花模様のついているサラサのカーテンが動いて、そこから子供の顔が外をのぞくのが見えました。 わたしは最初、その子はボルンホルム製の部屋時計を見ているんだろうと思いました。その時計は赤や緑でたいへんきれいに塗ってありました。そして上にはカッコウがとまっていて、下には重い鉛のおもりが垂れ下がっていました。ぴかぴか光るしんちゅう板の振子があっちこっちに揺れ動いて、コットン、コットンいっていました。 ところが、その子が見ていたのはこの時計ではありませんでした。そうです、この子が見ていたのは、母親の紡車だったのです。それは時計の真下に置いてありました。その紡車こそ、この子が家じゅうで一番好きなものだったのです。でも、それにさわることはできません。なぜって、ちょっとでもさわろうものなら、すぐに指先をぱんとたたかれるのですから。でも、母親が糸をつむいでいる間じゅう、この子はいつまでもそこにすわって、ぶんぶんいう紡錘と、ぐるぐるまわる車とをながめているのでした。そしてそれをながめながら、自分だけの思いにふけるのです。ああ、ぼくにもこの紡車でつむぐことができたらなあ! 父親も母親も眠っていました。男の子はふたりのほうを見ました。そして紡車をながめました。
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