ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」の公式ブログです。

2021-02-09

絵のない絵本(40/59)

(747字。目安の読了時間:2分)

』そうして、いろいろと思いだしているうちに、 『ああ、そうだっけ』と、女の子は言いました。『あたし、足に赤いきれをつけてた、かわいそうなアヒルを笑ったことがあったわ。あんなおかしなかっこうをして足をひきずるんですもの、あたし笑っちゃったんだわ。だけど、生き物を笑うなんていけないことだわね』こう言いながら、女の子はお人形のほうを見上げました。 『あんた、生き物を笑ったことがある?』と、ききました。すると、お人形は頭を振ったように見えました」 [#改ページ] 第二十三夜 「わたしはチロルを見おろしました」と、月は話しました。 「わたしは黒々としたもみの木に、くっきりとした長い影を岩の上へ投げかけさせました。わたしは幼子イエスを肩にのせた聖クリストファの画像をながめました。その絵は、このあたりの家々の壁に地面から屋根まで届くくらい、大きくかいてありました。聖フロリアンは燃えあがっている家に水をそそいでいました。キリストは血まみれになって、道ばたの十字架にかかっていました。これは新しい時代の人々にとっては古い画像です。でもわたしは、それらが建てられるのを見てきました。一つ、また一つと、建てられるのを見てきたのです。  山腹の高いところに、ちょうどツバメの巣のように、尼僧院が一つぽつんと立っています。ふたりの姉妹が上の塔の中に立って、鐘を鳴らしていました。ふたりともまだ年若く、そのためふたりの眼は山々をこえて、はるかかなたの世間のほうへ飛んで行きました。旅行馬車が一台、下の国道を走っていました。馬車の角笛が鳴りわたりました。すると、あわれな尼僧たちは同じ思いにかられて、眼を下の馬車にじっとそそぎました。若い妹の眼には涙がたまっていました。――やがて、角笛のひびきはだんだん弱くなっていきました。

========================= ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう!  https://bit.ly/3mRSvcV

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.com ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000019/files/58165_64334.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail ■月末まで一時的に配信を停止: https://forms.gle/d2gZZBtbeAEdXySW9


配信元: ブンゴウメール編集部 NOT SO BAD, LLC. Web: https://bungomail.com 配信停止:[unsubscribe]

公式サイト

ブンゴウメール

ブンゴウメール

1日3分のメールでムリせず毎月1冊本が読める、忙しいあなたのための読書サポートサービス

ブンゴウサーチ

ブンゴウサーチ

ブンゴウサーチは、青空文庫の作品を目安の読了時間で検索できるサービスです。