ブンゴウメール公式ブログ

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2018-06-15

【ブンゴウメール】夢十夜 (15/29)

(661字。目安の読了時間:2分) 女の髪は吹流しのように闇の中に尾を曳(ひ)いた。 それでもまだ篝(かがり)のある所まで来られない。  すると真闇な道の傍で、たちまちこけこっこうという鶏の声がした 。 女は身を空様に、両手に握った手綱をうんと控えた。 馬は前足の蹄(ひづめ)を堅い岩の上に発矢と刻み込んだ。  こけこっこうと鶏がまた一声鳴いた。  女は...

2018-06-14

【ブンゴウメール】夢十夜 (14/29)

(651字。目安の読了時間:2分)  その頃でも恋はあった。 自分は死ぬ前に一目思う女に逢(あ)いたいと云った。 大将は夜が開けて鶏が鳴くまでなら待つと云った。 鶏が鳴くまでに女をここへ呼ばなければならない。 鶏が鳴いても女が来なければ、自分は逢わずに殺されてしまう。  大将は腰をかけたまま、篝火を眺めている。 自分は大きな藁沓(わらぐつ)を組み合わしたまま、...

2018-06-13

【ブンゴウメール】夢十夜 (13/29)

(667字。目安の読了時間:2分) そうして、みんな長い髯を生やしていた。 革の帯を締めて、それへ棒のような剣を釣るしていた。 弓は藤蔓の太いのをそのまま用いたように見えた。 漆も塗ってなければ磨きもかけてない。 極めて素樸なものであった。  敵の大将は、弓の真中を右の手で握って、その弓を草の上へ突いて 、酒甕を伏せたようなものの上に腰をかけていた。 その顔を...

2018-06-12

【ブンゴウメール】夢十夜 (12/29)

(645字。目安の読了時間:2分) 「こうしておくと、箱の中で蛇になる。今に見せてやる。今に見せ てやる」と云いながら、爺さんが真直に歩き出した。 柳の下を抜けて、細い路を真直に下りて行った。 自分は蛇が見たいから、細い道をどこまでも追いて行った。 爺さんは時々「今になる」と云ったり、「蛇になる」と云ったりし て歩いて行く。 しまいには、  「今になる、蛇になる、  ...

2018-06-11

【ブンゴウメール】夢十夜 (11/29)

(707字。目安の読了時間:2分) 「真直かい」と神さんが聞いた時、ふうと吹いた息が、障子を通り越して柳の下を抜けて、河原の方へ真直に行った。 爺さんが表へ出た。 自分も後から出た。 爺さんの腰に小さい瓢箪(ひょうたん)がぶら下がっている。 肩から四角な箱を腋(わき)の下へ釣るしている。 浅黄の股引を穿(は)いて、浅黄の袖無しを着てい...

2018-06-10

【ブンゴウメール】夢十夜 (10/29)

(637字。目安の読了時間:2分) 台は黒光りに光っている。 片隅には四角な膳を前に置いて爺(じい)さんが一人で酒を飲んで いる。 肴(さかな)は煮しめらしい。  爺さんは酒の加減でなかなか赤くなっている。 その上顔中つやつやして皺(しわ)と云うほどのものはどこにも見 当らない。 ただ白い髯(ひげ)をありたけ生やしているから年寄と云う事だけ はわかる。 自分は...

2018-06-09

【ブンゴウメール】夢十夜 (9/29)

(634字。目安の読了時間:2分) 分っては大変だから、分らないうちに早く捨ててしまって、安心し なくってはならないように思える。 自分はますます足を早めた。  雨はさっきから降っている。 路はだんだん暗くなる。 ほとんど夢中である。 ただ背中に小さい小僧がくっついていて、その小僧が自分の過去、 現在、未来をことごとく照して、寸分の事実も洩(も)らさない鏡 のよう...

2018-06-08

【ブンゴウメール】夢十夜 (8/29)

(649字。目安の読了時間:2分) 「重かあない」と答えると「今に重くなるよ」と云った。  自分は黙って森を目標にあるいて行った。田の中の路が不 規則にうねってなかなか思うように出られない。しばらくすると二 股になった。自分は股の根に立って、 ちょっと休んだ。 「石が立ってるはずだがな」と小僧が云った。  なるほど八寸角の石が腰ほどの高さに立っている。 表には左り日ヶ窪(くぼ)...

2018-06-07

【ブンゴウメール】夢十夜 (7/29)

(697字。目安の読了時間:2分) と云って無はちっとも現前しない。 ただ好加減に坐っていたようである。 ところへ忽然隣座敷の時計がチーンと鳴り始めた。  はっと思った。 右の手をすぐ短刀にかけた。 時計が二つ目をチーンと打った。 第三夜  こんな夢を見た。  六つになる子供を負ってる。 たしかに自分の子である。 ただ不思議な事にはいつの...

2018-06-06

【ブンゴウメール】夢十夜 (6/29)

(754字。目安の読了時間:2分) こめかみが釣って痛い。 眼は普通の倍も大きく開けてやった。  懸物が見える。 行灯が見える。 畳が見える。 和尚の薬缶頭がありありと見える。 鰐口を開いて嘲笑った声まで聞える。 怪しからん坊主だ。 どうしてもあの薬缶を首にしなくてはならん。 悟ってやる。 無だ、無だと舌の根で念じた。 無だと云うのにやっぱ...

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