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と云って無はちっとも現前しない。
ただ好加減に坐っていたようである。
ところへ忽然隣座敷の時計がチーンと鳴り始めた。
はっと思った。
右の手をすぐ短刀にかけた。
時計が二つ目をチーンと打った。
第三夜
こんな夢を見た。
六つになる子供を負ってる。
たしかに自分の子である。
ただ不思議な事にはいつの間にか眼が潰れて、青坊主になっている 。
自分が御前の眼はいつ潰れたのかいと聞くと、なに昔からさと答え た。
声は子供の声に相違ないが、言葉つきはまるで大人である。
しかも対等だ。
左右は青田である。
路は細い。
鷺の影が時々闇に差す。
「田圃へかかったね」と背中で云った。
「どうして解る」と顔を後ろへ振り向けるようにして聞いたら、
「だって鷺が鳴くじゃないか」と答えた。
すると鷺がはたして二声ほど鳴いた。
自分は我子ながら少し怖くなった。
こんなものを背負っていては、この先どうなるか分らない。
どこか打遣ゃる所はなかろうかと向うを見ると闇の中に大きな森が 見えた。
あすこならばと考え出す途端に、背中で、
「ふふん」と云う声がした。
「何を笑うんだ」
子供は返事をしなかった。
ただ
「御父さん、重いかい」と聞いた。
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