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2018-06-09

【ブンゴウメール】夢十夜 (9/29)

(634字。目安の読了時間:2分)

分っては大変だから、分らないうちに早く捨ててしまって、安心し なくってはならないように思える。
自分はますます足を早めた。

 雨はさっきから降っている。
路はだんだん暗くなる。
ほとんど夢中である。
ただ背中に小さい小僧がくっついていて、その小僧が自分の過去、 現在、未来をことごとく照して、寸分の事実も洩(も)らさない鏡 のように光っている。
しかもそれが自分の子である。
そうして盲目である。
自分はたまらなくなった。

「ここだ、ここだ。ちょうどその杉の根の処だ」

 雨の中で小僧の声は判然聞えた。
自分は覚えず留った。
いつしか森の中へ這入っていた。
一間ばかり先にある黒いものはたしかに小僧の云う通り杉の木と見 えた。

「御父さん、その杉の根の処だったね」

「うん、そうだ」と思わず答えてしまった。

「文化五年辰年だろう」

 なるほど文化五年辰年らしく思われた。

「御前がおれを殺したのは今からちょうど百年前だね」

 自分はこの言葉を聞くや否や、今から百年前文化五年の辰年のこん な闇の晩に、この杉の根で、一人の盲目を殺したと云う自覚が、 忽然として頭の中に起った。
おれは人殺であったんだなと始めて気がついた途端に、背中の子が 急に石地蔵のように重くなった。

第四夜

 広い土間の真中に涼み台のようなものを据えて、その周囲に小さい 床几が並べてある。

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