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2018-06-08

【ブンゴウメール】夢十夜 (8/29)

(649字。目安の読了時間:2分)

「重かあない」と答えると「今に重くなるよ」と云った。

 自分は黙って森を目標にあるいて行った。田の中の路が不 規則にうねってなかなか思うように出られない。しばらくすると二 股になった。自分は股の根に立って、 ちょっと休んだ。

「石が立ってるはずだがな」と小僧が云った。

 なるほど八寸角の石が腰ほどの高さに立っている。
表には左り日ヶ窪(くぼ)、右堀田原とある。
闇だのに赤い字が明かに見えた。
赤い字は井守の腹のような色であった。

「左が好いだろう」と小僧が命令した。
左を見るとさっきの森が闇の影を、高い空から自分らの頭の上へ抛 (な)げかけていた。
自分はちょっと躊躇(ちゅうちょ)した。

「遠慮しないでもいい」と小僧がまた云った。
自分は仕方なしに森の方へ歩き出した。
腹の中では、よく盲目のくせに何でも知ってるなと考えながら一筋 道を森へ近づいてくると、背中で、「 どうも盲目は不自由でいけないね」と云った。

「だから負ってやるからいいじゃないか」

「負ぶって貰(もら)ってすまないが、どうも人に馬鹿にされてい けない。親にまで馬鹿にされるからいけない」

 何だか厭(いや)になった。
早く森へ行って捨ててしまおうと思って急いだ。

「もう少し行くと解る。――ちょうどこんな晩だったな」と背中で 独言のように云っている。

「何が」と際どい声を出して聞いた。

「何がって、知ってるじゃないか」と子供は嘲けるように答えた。
すると何だか知ってるような気がし出した。
けれども判然とは分らない。
ただこんな晩であったように思える。
そうしてもう少し行けば分るように思える。

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