ブンゴウメール公式ブログ

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2018-06-05

【ブンゴウメール】夢十夜 (5/29)

(767字。目安の読了時間:2分) ははあ怒ったなと云って笑った。 口惜(くや)しければ悟った証拠を持って来いと云ってぷいと向( むこう)をむいた。 怪(け)しからん。  隣の広間の床に据(す)えてある置時計が次の刻(とき)を打つま でには、きっと悟って見せる。 悟った上で、今夜また入室(にゅうしつ)する。 そうして和尚の首と悟りと引替(ひきかえ)にしてやる。 ...

2018-06-04

【ブンゴウメール】夢十夜 (4/29)

(687字。目安の読了時間:2分) 自分が百合から顔を離す拍子(ひょうし)に思わず、遠い空を見た ら、暁(あかつき)の星がたった一つ瞬(またた)いていた。 「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。 第二夜  こんな夢を見た。  和尚(おしょう)の室を退(さ)がって、廊下(ろうか)伝(づた )いに自分の部屋へ帰ると行灯(あんどう)がぼんやり点(とも) っている...

2018-06-03

【ブンゴウメール】夢十夜 (3/29)

(784字。目安の読了時間:2分) 抱(だ)き上(あ)げて土の上へ置くうちに、自分の胸と手が少し 暖くなった。  自分は苔(こけ)の上に坐った。 これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組を して、丸い墓石(はかいし)を眺めていた。 そのうちに、女の云った通り日が東から出た。 大きな赤い日であった。 それがまた女の云った通り、やがて西へ落ちた。 ...

2018-06-02

【ブンゴウメール】夢十夜 (2/29)

(737字。目安の読了時間:2分) そうして天から落ちて来る星の破片(かけ)を墓標(はかじるし) に置いて下さい。そうして墓の傍に待っていて下さい。また逢(あ )いに来ますから」  自分は、いつ逢いに来るかねと聞いた。 「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出 るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ 、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた...

2018-06-01

【ブンゴウメール】夢十夜 (1/29)

(747字。目安の読了時間:2分) 第一夜 こんな夢を見た。 腕組をして枕元に坐(すわ)っていると、仰向(あおむき)に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。 女は長い髪を枕に敷いて、輪郭(りんかく)の柔(やわ)らかな瓜実(うりざね)顔(がお)をその中に横たえている。 真白な頬の底に温かい血の色がほどよく差して、唇(くちびる)の色...

2018-05-31

【ブンゴウメール】走れメロス (31/31)

(321字。目安の読了時間:1分) おまえらは、わしの心に勝ったのだ。信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」 どっと群衆の間に、歓声が起った。 「万歳、王様万歳。」 ひとりの少女が、緋(ひ)のマントをメロスに捧げた。 メロスは、まごつ...

2018-05-30

【ブンゴウメール】走れメロス (30/31)

(322字。目安の読了時間:1分) 殴ってから優しく微笑(ほほえ)み、 「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」 メロスは腕に唸(うな)りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。 「ありがとう、友よ。」二...

2018-05-29

【ブンゴウメール】走れメロス (29/31)

(413字。目安の読了時間:1分) すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。 メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、 「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の...

2018-05-28

【ブンゴウメール】走れメロス (28/31)

(366字。目安の読了時間:1分) ついて来い! フィロストラトス。」 「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」 言うにや及ぶ。 まだ陽は沈まぬ。 最後の死力を尽して、メロスは走った。 メロスの頭は、からっぽだ。 何一つ考えていない。 ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずら...

2018-05-27

【ブンゴウメール】走れメロス (27/31)

(359字。目安の読了時間:1分) 「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」 「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。 走るより他は無い。 「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。いまはご自分のお命が大事です...

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