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2018-06-14

【ブンゴウメール】夢十夜 (14/29)

(651字。目安の読了時間:2分)

 その頃でも恋はあった。
自分は死ぬ前に一目思う女に逢(あ)いたいと云った。
大将は夜が開けて鶏が鳴くまでなら待つと云った。
鶏が鳴くまでに女をここへ呼ばなければならない。
鶏が鳴いても女が来なければ、自分は逢わずに殺されてしまう。

 大将は腰をかけたまま、篝火を眺めている。
自分は大きな藁沓(わらぐつ)を組み合わしたまま、草の上で女を 待っている。
夜はだんだん更ける。

 時々篝火が崩れる音がする。
崩れるたびに狼狽(うろた)えたように焔(ほのお)が大将になだ れかかる。
真黒な眉の下で、大将の眼がぴかぴかと光っている。
すると誰やら来て、新しい枝をたくさん火の中へ抛(な)げ込んで 行く。
しばらくすると、火がぱちぱちと鳴る。
暗闇を弾き返すような勇ましい音であった。

 この時女は、裏の楢(なら)の木に繋(つな)いである、白い馬を 引き出した。
鬣(たてがみ)を三度撫でて高い背にひらりと飛び乗った。
鞍(くら)もない鐙(あぶみ)もない裸馬であった。
長く白い足で、太腹を蹴ると、馬はいっさんに駆け出した。
誰かが篝りを継ぎ足したので、遠くの空が薄明るく見える。
馬はこの明るいものを目懸けて闇の中を飛んで来る。
鼻から火の柱のような息を二本出して飛んで来る。
それでも女は細い足でしきりなしに馬の腹を蹴っている。
馬は蹄(ひづめ)の音が宙で鳴るほど早く飛んで来る。
女の髪は吹流しのように闇の中に尾を曳(ひ)いた。

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