(611字。目安の読了時間:2分) 唖※子の談に本郷辺にては蝉未鳴かざるに早く蜩をきゝたりといふ。 昨日赤蜻※の庭に飛ぶを見たり。 是亦奇といふべし。 七月十六日。 花月第四号編輯。 七月十七日。 天気定りて再び暑くなりぬ。 七月十八日。 未秋ならざるに此夜虫声を聞く。 七月十九日。 蒸雲天を蔽ひ暑気甚し。 半輪の月空しく樹頭に在り。 昨日より気分すぐれず、深更に及び腹...
(658字。目安の読了時間:2分) 七月二日。 清元梅吉唖※子をたのみ一枝会帳簿の整理をなしたき由。 再参の依頼により其の趣を唖々子に報ず。 七月三日。 風あり暑気少しく忍易し。 母上来たまひて老媼しん入用なればとて連行かれたり。 予は始めより秋田県出張中なる威三郎方へ遣したき下心なりと推察したれば何事をも言はざりしなり。 我が家俄に炊事をなすものなく独居の不便こゝに至つて益甚し...
(623字。目安の読了時間:2分) 日曜日。 夕方久米氏来訪。 井阪梅雪氏現のせうこを請はるゝ由を告ぐ。 後園に栽培したる薬草を摘み久米氏に托して贈る。 六月十七日。 この頃腹具合思はしからず。 築地に行きしが元気なく三味線稽古面白からず。 六月十八日。 陰晴定りなく雨ならむとして雨来らず。 蒸暑し。 夜机に憑る。 四鄰蕭条。 梅の実頻に屋根の瓦を撲ち庭に落る響きこゆ。...
(629字。目安の読了時間:2分) 毎日風冷にして雨ふる。 梅花の時※[#「くさかんむり/即」、U+83AD、29-10]と思誤りてや此日頻に鶯の啼くを聞きぬ。 五月廿六日。 天候穏ならず。 風冷なり。 夜山家集をよむ。 五月廿七日。 薔薇花満開。 夜唖※子来談。 花月第一号純益四拾弐円ばかりの由。 五月三十日。 空晴れて俄に暑し。 人々早くも浴衣をきる。 五月卅一日...
(650字。目安の読了時間:2分) 河骨を植えたる水瓶の中にて鳴くものの如し。 五月五日。 母上粽を携へて病を問はる。 昼過四時頃驟雨雷鳴。 夜に及んで益甚し。 電燈明滅二三回に及ぶ。 初更花月第一号新橋堂より到着す。 五月六日。 階前の来青花開く。 異香馥郁たり。 五月十日。 烟雨軽寒を催す。 服部歌舟子が関口の邸に招がる。 躑躅満開。 園林幽邃。 雨中一段の趣...
(641字。目安の読了時間:2分) 円右、小さん、喜久太夫、山彦師匠、各得意の技をなす。 四月廿三日。 常磐木倶楽部にて梅吉弟子梅初名弘の会あり。 余野間翁と共に招がれ、梅之助の三味線、梅次上調子にて浦里を語る。 翁は得意の青海波を語る。 四月廿六日。 午後より雨ふる。 清元会なり。 四月廿七日。 晴又※。 花月第一号校正終了。 四月廿八日。 唖々子来訪。 杜鵑花満開...
(693字。目安の読了時間:2分) 然る処いろ/\面倒なる事のみ起来りて煩しければ暇をやり、良き縁もあらば片づきて身を全うせよと言聞かせ置きしが、矢張浮きたる家業の外さしあたり身の振方つかざりしと見ゆ。 三月廿七日。 母上訪来らる。 三月廿八日。 風邪全癒。 園中を逍遥す。 春草茸※。 水仙瑞香連翹尽く花ひらく。 春蘭の花香しく桃花灼然たり。 芍薬の芽地を※[#「抜」の「友」...
(654字。目安の読了時間:2分) 此日東洋印刷会社へ支払ふ。 三月九日。 微風軽寒。 神田電車通の古書肆をあさる。 三月十日。 春※鶯語を聞く。 午後烈風雨を誘ひしが夜半に至り雲去り星出づ。 三月十一日。 風寒し。 風邪の心地にて早く寝に就く。 三月十二日。 臥病。 園丁萩を植替ふ。 三月十六日。 唖※子令弟梧郎君病死の報に接す。 大雨。 三月十七日。 雨晴...
(638字。目安の読了時間:2分) 二月十三日。 樹間始めて鶯語をきく。 福寿草花あり。 今村次七君金沢より出京、断膓亭を訪はれ浮世絵の事を談ぜらる。 二月十五日。 三田文学に書かでもの記を寄す。 二月廿四日。 新演藝過日市川左団次のために懸賞脚本の募集をなす。 此日選評者一同を東仲通鳥屋末広に招飲す。 余も選評者中の一人なれば招れて徃く。 帰途新福にて八重次唖々子と飲む。...
(641字。目安の読了時間:2分) 余両三年来折々沢田東江の書帖を臨写すれど今に至つて甚悪筆なり。 三味線と書とはいつも思ふやうに行かず。 よく/\不器用の生れと見ゆ。 正月廿八日。 過日断膓亭襍稾を知友に贈呈す。 其返書追追到着す。 馬塲孤蝶氏懇切なる批評を寄せらる。 二月朔。 清元梅吉本日より稽古始める由言越したれば徃く。 清心上げざらひをなす。 二月二日。 立春の節...