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此日東洋印刷会社へ支払ふ。 三月九日。 微風軽寒。 神田電車通の古書肆をあさる。 三月十日。 春※鶯語を聞く。 午後烈風雨を誘ひしが夜半に至り雲去り星出づ。 三月十一日。 風寒し。 風邪の心地にて早く寝に就く。 三月十二日。 臥病。 園丁萩を植替ふ。 三月十六日。 唖※子令弟梧郎君病死の報に接す。 大雨。 三月十七日。 雨晴れ庭上草色新なり。 病未痊えず。 終日縄床に在り。 三月十九日。 いまだ起出る気力なし。 終日横臥読書す。 此日天気晴朗。 園梅満開。 鳥語欣々たり。 三月二十日。 北風烈しく寒又加はる。 新福亭主人病を問ひ来る。 三月廿二日。 風烈しく薄暮雹降り遠雷ひゞく。 八重次訪来る。 少婢お房既に家に在らざるが故なり。 三月廿三日。 病既によし。 唖々子米刃堂解雇となりし由聞知り、慰めむとて牛門の酒亭に招いで倶に飲む。 三月廿五日。 暴風大雨。 落梅雪の如し。 三月廿六日。 雨晴れしが風歇まず。 お房四谷より君花と名乗りて再び左褄取ることになりしとて菓子折に手紙を添へ使の者に持たせ越したり。 お房もと牛込照武蔵の賤妓なりしが余病来独居甚不便なれば女中代りに召使はむとて、一昨年の暮いさゝかの借金支払ひやりて、家につれ来りしなり。 然る処いろ/\面倒なる事のみ起来りて煩しければ暇をやり、良き縁もあらば片づきて身を全うせよと言聞かせ置きしが、矢張浮きたる家業の外さしあたり身の振方つかざりしと見ゆ。
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