ブンゴウメール公式ブログ

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2020-07-11

麦藁帽子(11/31)

(563字。目安の読了時間:2分) それから私は郵便局で、私の母へ宛てて電報を打った。 「ボンボンオクレ」  そうして私は汗だくになって、決勝点に近づくときの選手の真似をして、死にものぐるいの恰好で、ペダルを踏みながら、村に帰ってきた。  それから二三日が過ぎた。 或る日のこと、海岸で、私たちは寝そべりながら、順番に、お互を砂の中に埋めっこしていた。 私の番だった。 私は全身を生埋...

2020-07-10

麦藁帽子(10/31)

(569字。目安の読了時間:2分) むしろ、そんな薄情な奴になるより、嘘つきになった方がましだ。  私は頬をふくらませて、何も云わずに、汗を拭いていた。 どうも、さっきから、あの夾竹桃の薄紅い花が目ざわりでいけない。  この二三日、お前は、鼠色の、だぶだぶな海水着をきている。 お前はそれを着るのをいやがっていた。 いままでのお前の海水着には、どうしたのか、胸のところに大きな心臓型の孔...

2020-07-09

麦藁帽子(9/31)

(633字。目安の読了時間:2分) ……ちょっと、やってみない」 「だってラケットはなし、一体何処でするのさ」 「小学校へ行けば、みんな貸してくれるわ」  それがお前と二人きりで遊ぶには、もってこいの機会に見えたので、私はそれを逃がすまいとして、すぐ分るような嘘(うそ)をついた。 私はまだ一度もラケットを手にしたことなんか無かったのだ。 しかし少女の相手ぐらいなら、そんなものはすぐ出...

2020-07-08

麦藁帽子(8/31)

(580字。目安の読了時間:2分)  まだあんまり開けていない、そのT村には、避暑客らしいものは、私たちの他には、一組もない位だった。 私たちはその小さな村の人気者だった。 海岸などにいると、いつも私たちの周りには人だかりがした程に。 そうして村の善良な人々は、私のことを、お前の兄だと間違えていた。 それが私をますます有頂天にさせた。  そればかりでなしに、私の母みたいな、子供のうる...

2020-07-07

麦藁帽子(7/31)

(602字。目安の読了時間:2分) 「今日はまだ一ぺんもしてあげなかったのね……」そう云って、お前はその小さな弟を引きよせて、私たちのいる前で、平気で彼と接吻をする。  私はいつまでも投球のモオションを続けながら、それを横目で見ている。  その牧場のむこうは麦畑だった。 その麦畑と麦畑の間を、小さな川が流れていた。 よくそこへ釣りをしに行った。 お前は私たちの後から、黐竿(もちざお)...

2020-07-06

麦藁帽子(6/31)

(593字。目安の読了時間:2分)  沖の方で泳いでいると、水があんまり綺麗なので、私たちの泳いでいる影が、魚のかげと一しょに、水底に映った。 そのおかげで、空にそれとよく似た雲がうかんでいる時は、それもまた、私たちの空にうつる影ではないかとさえ思えてくる。 ……  私たちの田舎ずまいは、一銭銅貨の表と裏とのように、いろんな家畜小屋と脊中合わせだった。 ときどき家畜らが交尾をした。 ...

2020-07-05

麦藁帽子(5/31)

(573字。目安の読了時間:2分) ……」――私は振りむく。 さっきの少女が、砂の中から半身を出してにっこりと笑っているのが、今度は、私にもよく見える。 「なあんだ、君だったの?」 「おわかりになりませんでしたこと?」  海水着がどうも怪しい。 私がそれ一枚きりになるや否や、私は妖精の仲間入りをする。 私は身軽になって、いままでちっとも見えなかったものが忽(たちま)ち見え出す…… ...

2020-07-04

麦藁帽子(4/31)

(552字。目安の読了時間:2分)  私は海岸へ行く道順を教わると、すぐ裸足になって、松林の中の、その小径を飛んで行った。 焼けた砂が、まるでパンの焦げるような好い匂いがした。  海岸には、光線がぎっしりと充填って、まぶしくって、何にも見えない位だった。 そしてその光線の中へは、一種の妖精にでもならなければ、這入れないように見えた。 私は盲のように、手さぐりしながら、その中へおずおずと...

2020-07-03

麦藁帽子(3/31)

(591字。目安の読了時間:2分) 真っ白な運動服を着た、二人とも私よりすこし年上の、お前の兄たちの姿が、先ず浮ぶ。 毎日のように、私は彼等とベエスボオルの練習をした。 或る日、私は田圃に落ちた。 花環を手にしていたお前の傍で、私は裸かにさせられた。 私は真っ赤になった。 ……やがて彼等は、二人とも地方の高等学校へ行ってしまった。 もうかれこれ三四年になる。 それからはあんまり彼...

2020-07-02

麦藁帽子(2/31)

(622字。目安の読了時間:2分) そして、私のためにお前が泥だらけになったズボンを洗濯してくれている間、私はてれかくしに、わざと道化けて、お前のために持ってやっている花環を、私の帽子の代りに、かぶって見せたりする。 そして、まるで古代の彫刻のように、そこに不動の姿勢で、私は突っ立っている。 顔を真っ赤にして……         ※  夏休みが来た。  寄宿舎から、その春、入寮したば...

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