ブンゴウメール公式ブログ

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外科室(10/29)

(341字。目安の読了時間:1分) うとうとあそばすと、すぐ済んでしまいます」 このとき夫人の眉は動き、口は曲みて、瞬間苦痛に堪えざるごとくなりし。半ば目を※(みは)きて、「そんなに強いるなら仕方がない。私はね、心に一つ秘密がある。痲酔剤は譫言を…

外科室(9/29)

(303字。目安の読了時間:1分) 伯爵は前に進み、「奥、そんな無理を謂ってはいけません。できなくってもいいということがあるものか。わがままを謂ってはなりません」 侯爵はまたかたわらより口を挟めり。「あまり、無理をお謂やったら、姫を連れて来て見…

外科室(8/29)

(306字。目安の読了時間:1分) 腰元は恐る恐る繰り返して、「お聞き済みでございましょうか」「ああ」とばかり答えたまう。 念を推して、「それではよろしゅうございますね」「何かい、痲酔剤をかい」「はい、手術の済みますまで、ちょっとの間でございま…

外科室(7/29)

(312字。目安の読了時間:1分) その顔色はいかにしけん、にわかに少しく変わりたり。 さてはいかなる医学士も、驚破という場合に望みては、さすがに懸念のなからんやと、予は同情を表したりき。 看護婦は医学士の旨を領してのち、かの腰元に立ち向かいて、…

外科室(6/29)

(327字。目安の読了時間:1分) そのいたく落ち着きたる、これを頼もしと謂(い)わば謂え、伯爵夫人の爾(しか)き容体を見たる予が眼よりはむしろ心憎きばかりなりしなり。 おりからしとやかに戸を排して、静かにここに入り来たれるは、先刻に廊下にて行…

外科室(5/29)

(303字。目安の読了時間:1分) 脣(くちびる)の色少しく褪(あ)せたるに、玉のごとき前歯かすかに見え、眼は固く閉ざしたるが、眉は思いなしか顰(ひそ)みて見られつ。わずかに束ねたる頭髪は、ふさふさと枕に乱れて、台の上にこぼれたり。 そのかよわ…

外科室(4/29)

(387字。目安の読了時間:1分) 看護婦その者にして、胸に勲章帯びたるも見受けたるが、あるやんごとなきあたりより特に下したまえるもありぞと思わる。他に女性とてはあらざりし。なにがし公と、なにがし侯と、なにがし伯と、みな立ち会いの親族なり。しか…