ブンゴウメール公式ブログ

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外科室(7/29)

(312字。目安の読了時間:1分) その顔色はいかにしけん、にわかに少しく変わりたり。 さてはいかなる医学士も、驚破という場合に望みては、さすがに懸念のなからんやと、予は同情を表したりき。 看護婦は医学士の旨を領してのち、かの腰元に立ち向かいて、…

外科室(6/29)

(327字。目安の読了時間:1分) そのいたく落ち着きたる、これを頼もしと謂(い)わば謂え、伯爵夫人の爾(しか)き容体を見たる予が眼よりはむしろ心憎きばかりなりしなり。 おりからしとやかに戸を排して、静かにここに入り来たれるは、先刻に廊下にて行…

外科室(5/29)

(303字。目安の読了時間:1分) 脣(くちびる)の色少しく褪(あ)せたるに、玉のごとき前歯かすかに見え、眼は固く閉ざしたるが、眉は思いなしか顰(ひそ)みて見られつ。わずかに束ねたる頭髪は、ふさふさと枕に乱れて、台の上にこぼれたり。 そのかよわ…

外科室(4/29)

(387字。目安の読了時間:1分) 看護婦その者にして、胸に勲章帯びたるも見受けたるが、あるやんごとなきあたりより特に下したまえるもありぞと思わる。他に女性とてはあらざりし。なにがし公と、なにがし侯と、なにがし伯と、みな立ち会いの親族なり。しか…

外科室(3/29)

(391字。目安の読了時間:1分) 渠らのある者は沈痛に、ある者は憂慮わしげに、はたある者はあわただしげに、いずれも顔色穏やかならで、忙しげなる小刻みの靴の音、草履の響き、一種寂寞たる病院の高き天井と、広き建具と、長き廊下との間にて、異様の跫音…

外科室(2/29)

(318字。目安の読了時間:1分) …これのみならず玄関より外科室、外科室より二階なる病室に通うあいだの長き廊下には、フロックコート着たる紳士、制服着けたる武官、あるいは羽織袴(はかま)の扮装の人物、その他、貴婦人令嬢等いずれもただならず気高き…

外科室(1/29)

(427字。目安の読了時間:1分) 上 実は好奇心のゆえに、しかれども予は予が画師たるを利器として、ともかくも口実を設けつつ、予と兄弟もただならざる医学士高峰をしいて、某の日東京府下の一病院において、渠(かれ)が刀を下すべき、貴船伯爵夫人の手術…