(405字。目安の読了時間:1分) いろいろの計画が心に浮んだ。 あるときは死骸を細かく切って火で焼いてしまおうと考えた。 またあるときには穴蔵の床にそれを埋める穴を掘ろうと決心した。 さらにまた、庭の井戸のなかへ投げこもうかとも――商品のように箱のなかへ入れて普通やるように荷造りして、運搬人に家から持ち出させようかとも、考えてみた。 最後に、これらのどれよりもずっとい...
(400字。目安の読了時間:1分) 猫もその急な階段を私のあとへついて降りてきたが、もう少しのことで私を真っ逆さまに突き落そうとしたので、私はかっと激怒した。 怒りのあまり、これまで自分の手を止めていたあの子供らしい怖さも忘れて、斧を振り上げ、その動物をめがけて一撃に打ち下ろそうとした。 それを自分の思ったとおりに打ち下ろしたなら、もちろん、猫は即座に死んでしまったろう。 ...
(461字。目安の読了時間:1分) 夜には、私は言いようもなく恐ろしい夢から毎時間ぎょっとして目覚めると、そいつの熱い息が自分の顔にかかり、そのどっしりした重さが――私には払い落す力のない悪魔の化身が――いつもいつも私の心臓の上に圧しかかっているのだった! こういった呵責に押しつけられて、私のうちに少しばかり残っていた善も敗北してしまった。 邪悪な考えが私の唯一の友となった、...
(430字。目安の読了時間:1分) ――そして、とりわけこのために、私はその怪物を嫌い、恐れ、できるなら思いきってやっつけてしまいたいと思ったのであるが、――それはいまや、恐ろしい――もの凄い物の――絞首台の――形になったのだ! ――おお、恐怖と罪悪との――苦悶と死との痛ましい恐ろしい刑具の形になったのだ! そしていまこそ私は実に単なる人間の惨めさ以上に惨めであった。 一匹の...
(467字。目安の読了時間:1分) 私は告白するのが恥ずかしいくらいだが――そうだ、この重罪人の監房のなかにあってさえも、告白するのが恥ずかしいくらいだが――その動物が私の心に起させた恐怖の念は、実にくだらない一つの妄想のために強められていたのであった。 その猫と前に殺した猫との唯一の眼に見える違いといえば、さっき話したあの白い毛の斑点なのだが、妻はその斑点のことで何度か私に注意し...
(426字。目安の読了時間:1分) 私が腰かけているときにはいつでも、椅子の下にうずくまったり、あるいは膝の上へ上がって、しきりにどこへでもいまいましくじゃれついたりした。 立ち上がって歩こうとすると、両足のあいだへ入って、私を倒しそうにしたり、あるいはその長い鋭い爪を私の着物にひっかけて、胸のところまでよじ登ったりする。 そんなときには、殴り殺してしまいたかったけれども、そう...
(355字。目安の読了時間:1分) 疑いもなく、その動物に対する私の憎しみを増したのは、それを家へ連れてきた翌朝、それにもプルートォのように片眼がないということを発見したことであった。 けれども、この事がらのためにそれはますます妻にかわいがられるだけであった。 妻は、以前は私のりっぱな特徴であり、また多くのもっとも単純な、もっとも純粋な快楽の源であったあの慈悲ぶかい気持を、前...
(428字。目安の読了時間:1分) 私はというと、間もなくその猫に対する嫌悪の情が心のなかに湧き起るのに気がついた。 これは自分の予想していたこととは正反対であった。 しかし――どうしてだか、またなぜだかは知らないが――猫がはっきり私を好いていることが私をかえって厭がらせ、うるさがらせた。 だんだんに、この厭でうるさいという感情が嵩じてはげしい憎しみになっていった。 ...
(418字。目安の読了時間:1分) プルートォは体のどこにも白い毛が一本もなかったが、この猫は、胸のところがほとんど一面に、ぼんやりした形ではあるが、大きな、白い斑点で蔽われているのだ。 私がさわると、その猫はすぐに立ち上がり、さかんにごろごろ咽喉を鳴らし、私の手に体をすりつけ、私が目をつけてやったのを喜んでいるようだった。 これこそ私の探している猫だった。 私はすぐにそ...
(430字。目安の読了時間:1分) 私は猫のいなくなったことを悔むようにさえなり、そのころ行きつけの悪所でそれの代りになる同じ種類の、またいくらか似たような毛並のものがいないかと自分のまわりを捜すようにもなった。 ある夜、ごくたちの悪い酒場に、なかば茫然として腰かけていると、その部屋の主な家具をになっているジン酒かラム酒の大樽の上に、なんだか黒い物がじっとしているのに、とつぜん注...