ブンゴウメール (563字。目安の読了時間:2分) 救われた思いがしました。 今までその知覚まで失っていた山の早春の匂いが身にせまって強く冷めたく分るのでした。 男は家へ帰りました。 女は嬉しげに彼を迎えました。 「どこへ行っていたのさ。無理なことを言ってお前を苦しめてすまなかったわね。でも、お前がいなくなってからの私の淋しさを察しておくれな」 女がこんなにやさしいことは今ま...
いつもブンゴウメールをご利用いただきありがとうございます。 突然ですが、実はブンゴウメールはもうすぐリリース1周年を迎えます(めでたい!)。 1年前はこんなに多くの方に使ってもらえるとは思っていなかったので、本当にうれしい限りです。ありがとうございます!! というわけで、1周年の感謝も込めてブンゴウメールにたのしい新機能をいっぱい作ってみました。 春の新機能祭りです。 どれも有料版「ブ...
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ブンゴウメール公式配信(無料版の配信)は、現在シンプルなテキストメール形式で配信されています。 一方有料版「ブンゴウメールPRO」で配信しているメールは、よりリッチで見た目がきれいなHTMLメール形式で配信されています。 これまでは有料版ユーザーでも、無料版の公式配信はテキストメール形式でしか受け取れませんでした。 しかし今後はこの公式配信もHTMLメールで受け取れるようになりましたよ、という...
ブンゴウメール (616字。目安の読了時間:2分) 空の無限の明暗を走りつづけることは、女を殺すことによって、とめることができます。 そして、空は落ちてきます。 彼はホッとすることができます。 然し、彼の心臓には孔があいているのでした。 彼の胸から鳥の姿が飛び去り、掻き消えているのでした。 あの女が俺なんだろうか? そして空を無限に直線に飛ぶ鳥が俺自身だったのだろうか? と彼は...
ブンゴウメール (583字。目安の読了時間:2分) この部屋があのいつまでも涯のない無限の明暗のくりかえしの空の筈ですが、それはもう思いだすことができません。 そして女は鳥ではなしに、やっぱり美しいいつもの女でありました。 けれども彼は答えました。 「俺は厭だよ」 女はびっくりしました。 そのあげくに笑いだしました。 「おやおや。お前も臆病風に吹かれたの。お前もただの弱虫ね」 ...
ブンゴウメール (613字。目安の読了時間:2分) その鳥は疲れません。 常に爽快に風をきり、スイスイと小気味よく無限に飛びつづけているのでした。 けれども彼はただの鳥でした。 枝から枝を飛び廻り、たまに谷を渉るぐらいがせいぜいで、枝にとまってうたたねしている梟にも似ていました。 彼は敏捷でした。 全身がよく動き、よく歩き、動作は生き生きしていました。 彼の心は然し尻の重たい鳥...
ブンゴウメール (609字。目安の読了時間:2分) きっと退屈を忘れるから」 「何を」 「何でも喋りたいことをさ」 「喋りたいことなんかあるものか」 男はいまいましがってアクビをしました。 都にも山がありました。 然し、山の上には寺があったり庵があったり、そして、そこには却って多くの人の往来がありました。 山から都が一目に見えます。 なんというたくさんの家だろう。 そし...
ブンゴウメール (625字。目安の読了時間:2分) 水干をきた跣足の家来はたいがいふるまい酒に顔を赤くして威張りちらして歩いて行きました。 彼はマヌケだのバカだのノロマだのと市でも路上でもお寺の庭でも怒鳴られました。 それでもうそれぐらいのことには腹が立たなくなっていました。 男は何よりも退屈に苦しみました。 人間共というものは退屈なものだ、と彼はつくづく思いました。 彼はつまり...
ブンゴウメール (644字。目安の読了時間:2分) 娘の首のために、一人の若い貴公子の首が必要でした。 貴公子の首も念入りにお化粧され、二人の若者の首は燃え狂うような恋の遊びにふけります。 すねたり、怒ったり、憎んだり、嘘をついたり、だましたり、悲しい顔をしてみせたり、けれども二人の情熱が一度に燃えあがるときは一人の火がめいめい他の一人を焼きこがしてどっちも焼かれて舞いあがる火焔になっ...