ブンゴウメール
(583字。目安の読了時間:2分)
この部屋があのいつまでも涯のない無限の明暗のくりかえしの空の筈ですが、それはもう思いだすことができません。
そして女は鳥ではなしに、やっぱり美しいいつもの女でありました。
けれども彼は答えました。
「俺は厭だよ」
女はびっくりしました。
そのあげくに笑いだしました。
「おやおや。お前も臆病風に吹かれたの。お前もただの弱虫ね」
「そんな弱虫じゃないのだ」
「じゃ、何さ」
「キリがないから厭になったのさ」
「あら、おかしいね。なんでもキリがないものよ。毎日毎日ごはんを食べて、キリがないじゃないか。毎日毎日ねむって、キリがないじゃないか」
「それと違うのだ」
「どんな風に違うのよ」
男は返事につまりました。
けれども違うと思いました。
それで言いくるめられる苦しさを逃れて外へ出ました。
「白拍子の首をもっておいで」
女の声が後から呼びかけましたが、彼は答えませんでした。
彼はなぜ、どんな風に違うのだろうと考えましたが分りません。
だんだん夜になりました。
彼は又山の上へ登りました。
もう空も見えなくなっていました。
彼は気がつくと、空が落ちてくることを考えていました。
空が落ちてきます。
彼は首をしめつけられるように苦しんでいました。
それは女を殺すことでした。
空の無限の明暗を走りつづけることは、女を殺すことによって、とめることができます。
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