ブンゴウメール公式ブログ

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2020-06-25

機械(25/30)

(863字。目安の読了時間:2分) 軽部は前後から殴り出されると主力を屋敷に向けて彼を蹴りつけようとしたので私は軽部を背後へ引いて邪魔をすると、その暇に屋敷は軽部を押し倒して馬乗りになってまた殴り続けた。 私は屋敷のそんなにも元気になったのに驚いたが幾分私が理由もなく殴られたので私が腹を立てて彼と一緒に軽部に向ってかかっていくにちがいないと思ったからであろう。 しかし、私はもうそれ以上は軽...

2020-06-24

機械(24/30)

(844字。目安の読了時間:2分) 私は屋敷の弁解が出鱈目だとは分っていたが殴る軽部の掌の音があまり激しいのでもう殴るのだけはやめるが良いというと、軽部は急に私の方を振り返って、それでは二人は共謀かという。 だいたい共謀かどうかこういうことは考えれば分るではないかと私はいおうとしてふと考えると、なるほどこれは共謀だと思われないことはないばかりではなくひょっとすると事実は共謀でなくとも共謀と同...

2020-06-23

機械(23/30)

(822字。目安の読了時間:2分) それにしてもあれほど醜い顔をし続けながらまだ白状しない屋敷を思うといったい屋敷は暗室から何か確実に盗みとったのであろうかどうかと思われて、今度は屋敷の混乱している顔面の皺から彼の秘密を読みとることに苦心し始めた。 彼は突っ伏しながらも時々私の顔を見るのだが彼と視線を合わす度に私は彼へだんだん勢力を与えるためにやにや軽蔑したように笑ってやると、彼もそれには参...

2020-06-22

機械(22/30)

(850字。目安の読了時間:2分) ところが、急がしい市役所の仕事が漸く片附きかけた頃のこと、或る日軽部は急に屋敷を仕事場の断裁機の下へ捻じ伏せてしきりに白状せよ白状せよと迫っているのだ。 思うに屋敷はこっそり暗室へ這入ったところを軽部に見附けられたのであろうが私が仕事場へ這入っていったときは丁度軽部が押しつけた屋敷の上へ馬乗りになって後頭部を殴りつけているところであった。 とうとうやられ...

2020-06-21

機械(21/30)

(879字。目安の読了時間:2分) 多分屋敷ほどの男のことだから他人の家の暗室へ一度這入れば見る必要のある重要なことはすっかり見てしまったにちがいないのだし、見てしまった以上は殺害することも出来ない限り見られ損になるだけでどうしようも追っつくものではないのである。 私としてはただ今はこういう優れた男と偶然こんな所で出逢ったということを寧ろ感謝すべきなのであろう。 いや、それより私も彼のよう...

2020-06-20

機械(20/30)

(791字。目安の読了時間:2分) それでは君は私から疑われたとそれほど早く気附くからには君も這入って来るなり私から疑われることに対してそれほど警戒する練習が出来ていたわけだと私がいうと、それはそうだと彼はいった。 しかし、彼がそれはそうだといったのは自分は方法を盗みに来たのが目的だといったのと同様なのにも拘らず、それをそういう大胆さには私とて驚かざるを得ないのだ。 もしかすると彼は私を見...

2020-06-19

機械(19/30)

(821字。目安の読了時間:2分) 前に軽部を有頂天にさせて秘密を饒舌らせてしまった彼の魅力が私へも次第に乗り移って来始めたのだ。 私は屋敷と新聞を分け合って読んでいても共通の話題になると意見がいつも一致して進んでいく。 化学の話になっても理解の速度や遅度が拮抗しながら滑めらかに辷(すべ)っていく。 政治に関する見識でも社会に対する希望でも同じである。 ただ私と彼との相違している所は他...

2020-06-18

機械(18/30)

(810字。目安の読了時間:2分) それを知られてしまえばここの製作所にとっては莫大な損失であるばかりではない、私にしたっていままでの秘密は秘密ではなくなって生活の面白さがなくなるのだ。 向うが秘密を盗もうとするならこちらはそれを隠したってかまわぬであろう。 と思うと私は屋敷を一途に賊のように疑っていってみようと決心した。 前には私は軽部からそのように疑われたのだが今度は自分が他人を疑う...

2020-06-17

機械(17/30)

(748字。目安の読了時間:2分) すると細君は、お金をとったのはあなただぐらいのことはいくら寝坊の私だって知っているのだ。 盗るのならもっと上手にとって貰いたいと澄ましていうと主人は一層大きな声で面白そうに笑い続けた。 それでは昨夜主婦の部屋へ這入っていったのは屋敷ではなく主人だったのかと気がついたのだがいくらいつも金銭を持たされないからといって夜中自分の細君の枕もとの財布を狙って忍び込...

2020-06-16

機械(16/30)

(827字。目安の読了時間:2分) それにしても軽部がそんなにうまく秘密を饒舌ったのも彼のそのときの調子に乗った慢心だけではない、確に彼にそんなにも饒舌らせた屋敷の風※(ふうぼう)が軽部の心をそのとき浮き上らせてしまったのにちがいないのだ。 屋敷の眼光は鋭いがそれが柔ぐと相手の心を分裂させてしまう不思議な魅力を持っているのである。 その彼の魅力は絶えず私へも言葉をいう度に迫って来るのだが何...

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