ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」の公式ブログです。

2018-07-16

【ブンゴウメール】河童 (16/31)

(1363字。目安の読了時間:3分) 僕の同情したのはもちろんです。 同時にまた家族制度に対する詩人のトックの軽蔑を思い出したのも もちろんです。 僕はラップの肩をたたき、一生懸命に慰めました。 「そんなことはどこでもありがちだよ。まあ勇気を出したまえ。」 「しかし……しかし嘴(くちばし)でも腐っていなければ、……」 「それはあきらめるほかはないさ。さあ、トック君の家...

2018-07-15

【ブンゴウメール】河童 (15/31)

(1354字。目安の読了時間:3分) 悪はおのずから消滅すべし。』……しかもわたしは利益のほかにも 愛国心に燃え立っていたのですからね。」  ちょうどそこへはいってきたのはこの倶楽部(クラブ)の給仕です 。 給仕はゲエルにお時宜をした後、朗読でもするようにこう言いまし た。 「お宅のお隣に火事がございます。」 「火――火事!」  ゲエルは驚いて立ち上がりました。 僕も立ち...

2018-07-14

【ブンゴウメール】河童 (14/31)

(1359字。目安の読了時間:3分)  ゲエルはおお声に笑いました。 「それはむしろしあわせでしょう。」 「とにかくわたしは満足しています。しかしこれもあなたの前だけ に、――河童でないあなたの前だけに手放しで吹聴できるのです。 」 「するとつまりクオラックス内閣はゲエル夫人が支配しているので すね。」 「さあそうも言われますかね。……しかし七年前の戦争などはたし かにある雌の河...

2018-07-13

【ブンゴウメール】河童 (13/31)

(1361字。目安の読了時間:3分) のみならずまたゲエルの話は哲学者のマッグの話のように深みを持 っていなかったにせよ、僕には全然新しい世界を、――広い世界を のぞかせました。 ゲエルは、いつも純金の匙(さじ)に珈琲(カッフェ)の茶碗をか きまわしながら、快活にいろいろの話をしたものです。  なんでもある霧の深い晩、僕は冬薔薇を盛った花瓶を中にゲエルの 話を聞いていました。...

2018-07-12

【ブンゴウメール】河童 (12/31)

(1418字。目安の読了時間:3分) 時価は一噸二三銭ですがね。」  もちろんこういう工業上の奇蹟は書籍製造会社にばかり起こってい るわけではありません。 絵画製造会社にも、音楽製造会社にも、同じように起こっているの です。 実際またゲエルの話によれば、この国では平均一か月に七八百種の 機械が新案され、なんでもずんずん人手を待たずに大量生産が行な われるそうです。 従ってまた職工...

2018-07-11

【ブンゴウメール】河童 (11/31)

(1360字。目安の読了時間:3分) なにしろ音楽というものだけはどんなに風俗を壊乱する曲でも、耳 のない河童にはわかりませんからね。」 「しかしあの巡査は耳があるのですか?」 「さあ、それは疑問ですね。たぶん今の旋律を聞いているうちに細 君といっしょに寝ている時の心臓の鼓動でも思い出したのでしょう 。」  こういう間にも大騒ぎはいよいよ盛んになるばかりです。 クラバックはピアノに向...

2018-07-10

【ブンゴウメール】河童 (10/31)

(1407字。目安の読了時間:3分) するとセロの独奏が終わった後、妙に目の細い河童が一匹、無造作 に譜本を抱えたまま、壇の上へ上がってきました。 この河童はプログラムの教えるとおり、名高いクラバックという作 曲家です。 プログラムの教えるとおり、――いや、プログラムを見るまでもあ りません。 クラバックはトックが属している超人倶楽部(クラブ)の会員です から、僕もまた顔だけ...

2018-07-09

【ブンゴウメール】河童 (9/31)

(1419字。目安の読了時間:3分) が、やっと起き上がったのを見ると、失望というか、後悔というか 、とにかくなんとも形容できない、気の毒な顔をしていました。 しかしそれはまだいいのです。 これも僕の見かけた中に小さい雄の河童が一匹、雌の河童を追いか けていました。 雌の河童は例のとおり、誘惑的遁走をしているのです。 するとそこへ向こうの街から大きい雄の河童が一匹、鼻息を...

2018-07-08

【ブンゴウメール】河童 (8/31)

(1385字。目安の読了時間:3分) もっともこれは六十本目にテエブルの下へ転げ落ちるが早いか、た ちまち往生してしまいましたが。  僕はある月のいい晩、詩人のトックと肘を組んだまま、超人倶楽部 から帰ってきました。 トックはいつになく沈みこんでひとことも口をきかずにいました。 そのうちに僕らは火かげのさした、小さい窓の前を通りかかりまし た。 そのまた窓の向こうには...

2018-07-07

【ブンゴウメール】河童 (7/31)

(1371字。目安の読了時間:3分) 詩人が髪を長くしていることは我々人間と変わりません。 僕は時々トックの家へ退屈しのぎに遊びにゆきました。 トックはいつも狭い部屋に高山植物の鉢植えを並べ、詩を書いたり 煙草をのんだり、いかにも気楽そうに暮らしていました。 そのまた部屋の隅には雌の河童が一匹、(トックは自由恋愛家です から、細君というものは持たないのです。) 編み物か何かし...

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