ブンゴウメール公式ブログ

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2018-07-06

【ブンゴウメール】河童 (6/31)

(1366字。目安の読了時間:3分) が、そこにい合わせた産婆はたちまち細君の生殖器へ太い硝子(ガ ラス)の管を突きこみ、何か液体を注射しました。 すると細君はほっとしたように太い息をもらしました。 同時にまた今まで大きかった腹は水素瓦斯(すいそガス)を抜いた 風船のようにへたへたと縮んでしまいました。  こういう返事をするくらいですから、河童の子どもは生まれるが早 いか...

2018-07-05

【ブンゴウメール】河童 (5/31)

(1415字。目安の読了時間:3分) のみならずバッグを追いかける時、突然どこへ行ったのか、見えな くなったことを思い出しました。 しかも河童は皮膚の下によほど厚い脂肪を持っているとみえ、この 地下の国の温度は比較的低いのにもかかわらず、(平均華氏五十度 前後です。)着物というものを知らず[#「知らず」は底本では「 知らす」]にいるのです。 もちろんどの河童も目金をかけたり、巻煙...

2018-07-04

【ブンゴウメール】河童 (4/31)

(1393字。目安の読了時間:3分) 特別保護住民だった僕にだれも皆好奇心を持っていましたから、毎 日血圧を調べてもらいに、わざわざチャックを呼び寄せるゲエルと いう硝子(ガラス)会社の社長などもやはりこの部屋へ顔を出した ものです。 しかし最初の半月ほどの間に一番僕と親しくしたのはやはりあのバ ッグという漁夫だったのです。  ある生暖かい日の暮れです。 僕はこの部屋のテ...

2018-07-03

【ブンゴウメール】河童 (3/31)

(1449字。目安の読了時間:3分) 二  そのうちにやっと気がついてみると、僕は仰向けに倒れたまま、大 勢の河童にとり囲まれていました。 のみならず太い嘴(くちばし)の上に鼻目金をかけた河童が一匹、 僕のそばへひざまずきながら、僕の胸へ聴診器を当てていました。 その河童は僕が目をあいたのを見ると、僕に「静かに」という手真 似をし、それからだれか後ろにいる河童へ Quax, q...

2018-07-02

【ブンゴウメール】河童 (2/31)

(1363字。目安の読了時間:3分) コオンド・ビイフの罐(かん)を切ったり、枯れ枝を集めて火をつ けたり、――そんなことをしているうちにかれこれ十分はたったで しょう。 その間にどこまでも意地の悪い霧はいつかほのぼのと晴れかかりま した。 僕はパンをかじりながら、ちょっと腕時計をのぞいてみました。 時刻はもう一時二十分過ぎです。 が、それよりも驚いたのは何か気味の悪い顔...

2018-07-01

【ブンゴウメール】河童 (1/31)

(1403字。目安の読了時間:3分) 序  これはある精神病院の患者、――第二十三号がだれにでもしゃべる 話である。 彼はもう三十を越しているであろう。 が、一見したところはいかにも若々しい狂人である。 彼の半生の経験は、――いや、そんなことはどうでもよい。 彼はただじっと両膝をかかえ、時々窓の外へ目をやりながら、(鉄 格子をはめた窓の外には枯れ葉さえ見えない樫(かし)...

2018-06-29

【ブンゴウメール】夢十夜 (29/29)

(631字。目安の読了時間:2分) 庄太郎はやむをえずまた洋杖を振り上げた。 豚はぐうと鳴いてまた真逆様に穴の底へ転げ込んだ。 するとまた一匹あらわれた。 この時庄太郎はふと気がついて、向うを見ると、遥(はるか)の青 草原の尽きる辺から幾万匹か数え切れぬ豚が、群をなして一直線に 、この絶壁の上に立っている庄太郎を目懸けて鼻を鳴らしてくる。 庄太郎は心から恐縮した。 け...

2018-06-28

【ブンゴウメール】夢十夜 (28/29)

(678字。目安の読了時間:2分)  庄太郎は元来閑人の上に、すこぶる気作な男だから、ではお宅まで 持って参りましょうと云って、女といっしょに水菓子屋を出た。 それぎり帰って来なかった。  いかな庄太郎でも、あんまり呑気過ぎる。 只事じゃ無かろうと云って、親類や友達が騒ぎ出していると、七日 目の晩になって、ふらりと帰って来た。 そこで大勢寄ってたかって、庄さんどこへ行...

2018-06-27

【ブンゴウメール】夢十夜 (27/29)

第十夜  庄太郎が女に攫(さら)われてから七日目の晩にふらりと帰って来 て、急に熱が出てどっと、床に就いていると云って健さんが知らせ に来た。  庄太郎は町内一の好男子で、至極善良な正直者である。 ただ一つの道楽がある。 パナマの帽子を被って、夕方になると水菓子屋の店先へ腰をかけて 、往来の女の顔を眺めている。 そうしてしきりに感心している。 そのほかにはこれと云...

2018-06-26

【ブンゴウメール】夢十夜 (26/29)

(697字。目安の読了時間:2分)  子供はよくこの鈴の音で眼を覚まして、四辺を見ると真暗だものだ から、急に背中で泣き出す事がある。 その時母は口の内で何か祈りながら、背を振ってあやそうとする。 すると旨く泣きやむ事もある。 またますます烈しく泣き立てる事もある。 いずれにしても母は容易に立たない。  一通り夫の身の上を祈ってしまうと、今度は細帯を解いて、背中の...

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