(950字。目安の読了時間:2分) オシャベリ姫は、猫が本当に牢屋の外へ連れて行ってくれるのか知らんと変に思いながら、真暗な中で時々ふりかえる猫の眼を目あてにしてソロリソロリとあるき出しますと、不思議にも狭いと思った牢屋は大変に広くて、どこまで行っても突き当りません。 そのうちに何だか野原に来たようで、穿(は)いている靴の先に草っ葉が当るようです。 なおよく気をつけて見ると、頭の上には...
(867字。目安の読了時間:2分) 嘘を吐いて済みませんでしたとお云い。これから決して嘘を吐きませんとお云い。お母さんが詫(わび)をして上げるから」 と云われましたが、姫は頭を振って「イヤイヤ」をしながら、強情を張って泣くばかりでした。 「よし。そんなに強情を張るならいよいよ勘弁できぬ」 と王様は大層腹をお立てになって、とうとうオシャベリ姫を石の牢屋に入れておしまいになりました。 ...
(815字。目安の読了時間:2分) 王様もお妃様もおしゃべり姫のオシャベリに呆れておいでになるところへ、姫のお付きの女中が二人揃って姫の前に来て頭を下げて、 「お姫様、お化粧のお手伝いを致しにまいりました。もうじき御飯になりますから」 とお辞儀をしました。 お妃様はそれを見て、 「オオ。お前達は昨夜姫からおもしろい夢のお話をきいたそうだね」 と云われました。 王様からこう...
(998字。目安の読了時間:2分) それからどうした」 「そうしたら二人の女中が二人ともハイと云っておきて来ましたから、妾はやっと安心をして、今お話しした二つの夢のお話しをしてきかせました」 「二人とも吃驚したでしょうねえ」 と今度はお妃が云われました。 「エエ、ほんとにビックリして二人とも顔を見合わせましてね。ニコニコ笑って……それは大変にお芽出度い夢で御座います……って云うんです...
(893字。目安の読了時間:2分) 糸を噛み切った蜘蛛は、寄ってたかって女中を喰い殺してしまいました」 「ヤア、それは大変だ」 「何という可愛想なことでしょう」 と云ううちに王様とお妃様は立ち上がって、急いで機織部屋に行こうとなさいました。 オシャベリ姫は慌ててそれを押し止めていいました。 「まあ、お父様お母様、おききなさい……それがやっぱり夢なのですよ……」 「何だ、それも夢...
(925字。目安の読了時間:2分) 私はあんまりの不思議さにビックリして思わず外から……その糸をどうするの……と尋ねました」 「そうしたら何と返事をしたの」 とお妃様がお尋ねになりました。 「そうしたら、返事をしないのです」 「どうして」 「二人の女中はビックリして私の方を見ました。その拍子に今までブンブンまわっていた二人の女中の糸巻きが急にあべこべにまわりますと、大変です。金の糸...
(918字。目安の読了時間:2分) 「オホホホホホ。まあ、おききなさい。それからね、わたしは眼をさまして見ますと、まだ夜が明けないで真暗なんでしょう。あたしは何だか本当に黒ん坊が来そうになってこわくなりましたから、ソッと起き上って次の間の女中の寝ているところへ来て見ますと、二人いた女中が二人ともいないのです」 「憎い奴だ。お前の番をする役目なのにどこに行っていたのであろう。非道い眼に合わせて...
(894字。目安の読了時間:2分) ある国に王様がありまして、夫婦の間にたった一人、オシャベリ姫というお姫さまがありました。 このお姫様は大層美しいお姫様でしたが、どうしたものか生れ付きおしゃべりで、朝から晩まで何かしらシャベッていないと気もちがわるいので、おまけにそれを又きいてやる人がいないと大層御機嫌がわるいのです。 ある朝のこと、このオシャベリ姫は眼をさまして顔を洗うと、すぐに...
(309字。目安の読了時間:1分) 苦から救ってやろうと思って命を絶った。 それが罪であろうか。 殺したのは罪に相違ない。 しかしそれが苦から救うためであったと思うと、そこに疑いが生じて、どうしても解けぬのである。 庄兵衛の心の中には、いろいろに考えてみた末に、自分よりも上のものの判断に任すほかないという念、オオトリテエに従うほかないという念が生じた。 庄兵衛はお奉行様の判断を、そ...
(379字。目安の読了時間:1分) これは半年ほどの間、当時の事を幾たびも思い浮かべてみたのと、役場で問われ、町奉行所で調べられるそのたびごとに、注意に注意を加えてさらってみさせられたのとのためである。 庄兵衛はその場の様子を目のあたり見るような思いをして聞いていたが、これがはたして弟殺しというものだろうか、人殺しというものだろうかという疑いが、話を半分聞いた時から起こって来て、聞いてしま...