いつもブンゴウメールをご利用いただきありがとうございます。 現在ベータ版で公開している有料版「ブンゴウメールPRO」の、新機能追加 & 正式リリースについてのお知らせです! \=============================== 【1】 新機能「ストリーミング」チャネル \=============================== このたびPRO版に新しく「ストリーミング...
(386字。目安の読了時間:1分) わたくしは剃刀を握ったまま、ばあさんのはいって来てまた駆け出して行ったのを、ぼんやりして見ておりました。ばあさんが行ってしまってから、気がついて弟を見ますと、弟はもう息が切れておりました。傷口からはたいそうな血が出ておりました。それから年寄衆がおいでになって、役場へ連れてゆかれますまで、わたくしは剃刀をそばに置いて、目を半分あいたまま死んでいる弟の顔を見詰め...
(385字。目安の読了時間:1分) わたくしは剃刀の柄をしっかり握って、ずっと引きました。この時わたくしの内から締めておいた表口の戸をあけて、近所のばあさんがはいって来ました。留守の間、弟に薬を飲ませたり何かしてくれるように、わたくしの頼んでおいたばあさんなのでございます。もうだいぶ内のなかが暗くなっていましたから、わたくしにはばあさんがどれだけの事を見たのだかわかりませんでしたが、ばあさんは...
(358字。目安の読了時間:1分) わたくしの頭の中では、なんだかこう車の輪のような物がぐるぐる回っているようでございましたが、弟の目は恐ろしい催促をやめません。それにその目の恨めしそうなのがだんだん険しくなって来て、とうとう敵の顔をでもにらむような、憎々しい目になってしまいます。それを見ていて、わたくしはとうとう、これは弟の言ったとおりにしてやらなくてはならないと思いました。わたくしは『しか...
(463字。目安の読了時間:1分) わたくしはなんと言おうにも、声が出ませんので、黙って弟の喉の傷をのぞいて見ますと、なんでも右の手に剃刀を持って、横に笛を切ったが、それでは死に切れなかったので、そのまま剃刀を、えぐるように深く突っ込んだものと見えます。柄がやっと二寸ばかり傷口から出ています。わたくしはそれだけの事を見て、どうしようという思案もつかずに、弟の顔を見ました。弟はじっとわたくしを見...
(注意) 本日の配信には一部残酷な描写・流血表現等が含まれます。苦手な方はご注意ください。 \============================================== (370字。目安の読了時間:1分) ようよう物が言えるようになったのでございます。『すまない。どうぞ堪忍してくれ。どうせなおりそうにもない病気だから、早く死んで少しでも兄きにらくがさせたいと思ったのだ。...
(346字。目安の読了時間:1分) わたくしはびっくりいたして、手に持っていた竹の皮包みや何かを、そこへおっぽり出して、そばへ行って『どうしたどうした』と申しました。すると弟はまっ青な顔の、両方の頬(ほお)からあごへかけて血に染まったのをあげて、わたくしを見ましたが、物を言うことができませぬ。息をいたすたびに、傷口でひゅうひゅうという音がいたすだけでございます。わたくしにはどうも様子がわかりま...
(463字。目安の読了時間:1分) 初めはちょうど軒下に生まれた犬の子にふびんを掛けるように町内の人たちがお恵みくださいますので、近所じゅうの走り使いなどをいたして、飢え凍えもせずに、育ちました。次第に大きくなりまして職を捜しますにも、なるたけ二人が離れないようにいたして、いっしょにいて、助け合って働きました。去年の秋の事でございます。わたくしは弟といっしょに、西陣の織場にはいりまして、空引き...
(333字。目安の読了時間:1分) 「いろいろの事を聞くようだが、お前が今度島へやられるのは、人をあやめたからだという事だ。おれについでにそのわけを話して聞せてくれぬか。」 喜助はひどく恐れ入った様子で、「かしこまりました」と言って、小声で話し出した。 「どうも飛んだ心得違いで、恐ろしい事をいたしまして、なんとも申し上げようがございませぬ。あとで思ってみますと、どうしてあんな事ができたか...
(353字。目安の読了時間:1分) 庄兵衛は今さらのように驚異の目をみはって喜助を見た。 この時庄兵衛は空を仰いでいる喜助の頭から毫光がさすように思った。 ―――――――――――――――― 庄兵衛は喜助の顔をまもりつつまた、「喜助さん」と呼びかけた。 今度は「さん」と言ったが、これは充分の意識をもって称呼を改めたわけではない。 その声がわが口から出てわが耳に入るや...