ブンゴウメール (588字。目安の読了時間:2分) 「で、戦争は起ったのですか、それとも……」 「もう一つの重大なことがらは」 と区長は正吉の質問にはこたえず、さっきの続きを話した。 「連合科学協会員は最近天空においておどろくべき観測をした。それはどういうことであるかというと、わが地球をねらってこちらへ進んでくるふしぎな星があるということだ。それは彗星ではない。その星の動きぐあいから...
ブンゴウメール (504字。目安の読了時間:2分) その後また大きな戦争がおこりかけましてね――もちろん日本は関係がないのですがね――そのために、おびただしい原子爆弾が用意されました。そのとき世界の学者が集って組織している連合科学協会というのがあって、そこから大警告を出したのです。それは二つの重大なことがらでした」 「どういうんですか、その重大警告というのは……」 「その一つはですね、い...
ブンゴウメール (537字。目安の読了時間:2分) あれは何ですか」 林と草原の間に、妙にねじれた塔や、低い緑色の鍋をふせたようなものが見える。 「あのまるいものは、住宅の屋上になっています。塔は、原子弾が近づくのを監視している警戒塔です。すべて原子弾を警戒して、こんな銀座風景になったのです。みんな地下に住んでいます。ときどきものずきな者が、こうして地上に出て散歩するくらいです。おどろ...
ブンゴウメール (536字。目安の読了時間:2分) 何にのるのですか」 「動く道路です。そうそう、あなたの住んでいた三十年前には、動く道路はなかったんでしょうね。そのころは電車や自動車ばかりだったんでしょう。今はそんなものは、ほとんどなくなりました。その代りは動く道路がしています。道が動くのです。五本の動く道路が並んでいるのです。昔あったでしょう。ベルトというものがね。あれみたいに動くので...
ブンゴウメール (471字。目安の読了時間:1分) 例の四人組の外に、東京区長のカニザワ氏と大学病院長のサクラ女史が少年をとりまいていたが、少年は三十年前の話をいろいろとした。 そして三十年後の東京がどんなに変っているか、あまりに変っているのでそれを見物しているうちに気がへんにならないであろうかと心配したりした。 「大丈夫です。あたしがついていますもの。すぐ手あてをしてあげます」 と...
ブンゴウメール (523字。目安の読了時間:2分) かわりはてた銀座 「二十年たったら、世の中がどんなに変っているか、それを見たかったから、こんな冒険をしたんです」 と、小杉少年は、まわりの人たちに話した。 「ああ、お話中しつれいですが、じつは二十年じゃなく、あなたが冷凍されてから三十年たっているのですよ。ことしは昭和五十二年なんですからね」 「おやおや、三十年もぼくは睡って...
ブンゴウメール (569字。目安の読了時間:2分) これは、中からは外が見えないが、反対に外から中はよく見えるものだった。 こんなついたてを用いたわけは、金属球の中から出て来るはずの小杉正吉少年を、あまりたくさんの見物人のためにびっくりさせないための心づかいだった。 カンノ博士とあと五人の人だけがついたての中に入った。 そして金属球の扉Aの中にあった注意書のとおり、その底をやぶって電...
ブンゴウメール (509字。目安の読了時間:2分) 五トンぐらいのものがらくにもちあがるヘリコプター(竹とんぼ式飛行機)を一台至急ここまでまわしてくれるように、航空商会の千代田支店に頼んだ。 二十分ほどすると、空から一台のヘリコプターがゆうゆうと下りて来た。 頼んだのりものであった。 カンノ博士たちは、ハンカチーフをふった。 着陸したヘリコプターの貨物庫の中に、金属球を入れた。 ...
ブンゴウメール (547字。目安の読了時間:2分) この球を発見せられたる人は、この球が封印したるときより二十年以上たっていることをたしかめた後、この少年を冷凍球の中からとりだしていただきたい。 それはむずかしいことではない。 この底のBとしるした金属板を焼ききると、その中には電気のプラグがある。 そのプラグへ五十サイクル交流電気を百ボルトの電圧で供給すれば、四十八時間後には、自動的に...
ブンゴウメール (570字。目安の読了時間:2分) もっと上にあったのが、ころがりだして、ここまで来て停ったんだと思う」 「火星からなげてよこしたものじゃないか。開けると、中から火星人の手紙かなんか入っているんじゃない?」 「火星からじゃないよ。だってこのとおり×取扱注意、扉Aを開け×と、日本文字で書いてあるんだから、これは日本でこしらえたものにちがいない」 「早く、その扉Aというのを...