ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」の公式ブログです。

2019-07-03

三十年後の東京(3/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (463字。目安の読了時間:1分) みんな何となくおそろしいが、しかし自分たちで発見したものだから、ぜひその正体をたしかめたかった。  ようやくそばへ近よることが出来た。  沢のまん中に、直径三メートルもあると思われる金属球が、でんと腰をすえていた。 表面はぴかぴかに光沢を放っている。 十字にバンドがしてある。 アイ・ボルトが何本かうちこんである。 一同はそのまわ...

2019-07-02

三十年後の東京(2/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (520字。目安の読了時間:2分) 地図でみると、どうしてもここは、うばガ谷のはずなんだが?」 「でも、へんよ。地図からはかって、ここはどうしてもうばガ谷よ。この地図をごらんなさい。ほら、この岩」 「なるほどなあ、あれはたしかに三角岩だ。これはおどろいた。おい君、有名な万年雪が今年はすっかりとけてしまったんだぜ」  その人は、とつぜんことばを切って、目を皿のように大きく...

2019-07-01

三十年後の東京(1/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (484字。目安の読了時間:1分)    万年雪とける  昭和五十二年の夏は、たいへん暑かった。  ことに七月二十四日から一週間の暑さときたら、まったく話にならないほどの暑さだった。  涼しいはずの信州や上越の山国地方においてさえ、夜は雨戸をあけていないと、ねむられないほどの暑くるしさだった。 東京なんかでは、とても暑くて地上に出ていられなくて、都民はほとんどみんな地...

2019-06-30

僕の孤独癖について(8/8) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (626字。目安の読了時間:2分) ニイチェは読書を「休息」だと言つたが、今の僕にとつて、交際はたしかに一つの「休息」である。 人と話をして居る間だけは、何も考へずに愉快で居られるからである。  煙草や酒と同じく、交際もまた一つの「習慣」であると思ふ。 その習慣がつかない中は、忌はしく煩はしいものであるが、一旦既に習慣がついた以上は、それなしに生活ができないほど、日常的...

2019-06-29

僕の孤独癖について(7/8) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (746字。目安の読了時間:2分) 僕は一体話題のすくない人間であり、自己の狭い主観的興味に属すること以外、一切話することの出来ない質の人間だから、先方で話題を持ちかけて来ない以上は、幾時間でも黙つてゐる外はない。 だから客の方で黙つてゐると、結局眦み合つてしまふ。 そしてこの眦み合ひが苦しいのだ。 かうした長尻の客との対坐は、僕にとつてまさしく拷問の呵責である。  ...

2019-06-28

僕の孤独癖について(6/8) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (710字。目安の読了時間:2分)  かうした環境に育つた僕は、家で来客と話すよりも、こつちから先方へ訪ねて行き、出先で話すことを気楽にして居る。 それに僕は神経質で、非常に早く疲れ易い。 気心の合つた親友なら別であるが、さうでもない来客と話をすると、すぐに疲労が起つてきて、坐つて居るのさへ苦しくなる。 しかもそれを色々に隠して、来客と話さねばならないのである。 それ...

2019-06-27

僕の孤独癖について(5/8) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (702字。目安の読了時間:2分) だがそれだけまた友が恋しく、稀れに懐かしい友人と逢つた時など、恋人のやうに嬉しく離れがたい。 「常に孤独で居る人間は、稀れに逢ふ友人との会合を、さながら宴会のやうに嬉しがる」とニイチェが言つてるのは真理である。 つまりよく考へて見れば、僕も決して交際嫌ひといふわけではない。 ただ多くの一般の人々は、僕の変人である性格を理解してくれない...

2019-06-26

僕の孤独癖について(4/8) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (667字。目安の読了時間:2分) 人と人との交際といふことは、所詮相互の自己抑制と、利害の妥協関係の上に成立する。 ところで僕のやうな我がまま者には、自己を抑制することが出来ない上に、利害交換の妥協といふことが嫌ひなので、結局ひとりで孤独に居る外はないのである。 ショーペンハウエルの哲学は、この点でよく僕等の心理を捉へ、孤独者の為に慰安の言葉を話してくれる。 ショーペ...

2019-06-25

僕の孤独癖について(3/8) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (686字。目安の読了時間:2分)  この不思議な厭な病気ほど、僕を苦しめたものはない。 僕は二十八歳の時に、初めてドストイェフスキイの小説「白痴」をよんで吃驚した。 といふのは、その小説の主人公である白痴の貴族が、丁度その僕と同じ精神変質者であつたからだ。 白痴の主人公は、愛情の昂奮に駆られた時、不意に対手の頭を擲らうとする衝動が起り、押へることが出来ないで苦しむので...

2019-06-24

僕の孤独癖について(2/8) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (690字。目安の読了時間:2分) 人目を忍び、露見を恐れ、絶えずびくびくとして逃げ廻つてゐる犯罪者の心理は、早く既に、子供の時の僕が経験して居た。 その上僕は神経質であつた。 恐怖観念が非常に強く、何でもないことがひどく怖かつた。 幼年時代には、壁に映る時計や箒の影を見てさへ引きつけるほどに恐ろしかつた。 家人はそれを面白がり、僕によく悪戯をしてからかつた。 或る...

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