ブンゴウメール
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万年雪とける
昭和五十二年の夏は、たいへん暑かった。
ことに七月二十四日から一週間の暑さときたら、まったく話にならないほどの暑さだった。
涼しいはずの信州や上越の山国地方においてさえ、夜は雨戸をあけていないと、ねむられないほどの暑くるしさだった。
東京なんかでは、とても暑くて地上に出ていられなくて、都民はほとんどみんな地下街に下りて、その一週間をくらしたほどだった。
ものすごい暑さは日本アルプスの深い山の中を別あつかいにはしなかった。
アルプス山中の万年雪までがどんどんとけ出した。
雪渓の上を、しぶきをあげて流れ下る滝とも川ともつかないものが出来、積雪はどんどんやせていった。
うばガ谷の万年雪のことは、むかしから一番面積のひろいものとして、よく人に知られていた。
それはまるで氷河のようにこちこちに固まった古い雪であったが、それさえこんどの暑さで両側からとけだし、日に日にやせていった。
登山者たちがおどろいたのもむりではない。
「こんなところに流れがあったかね」
「いや、知らないね。地図でみると、どうしてもここは、うばガ谷のはずなんだが?」
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▼作者について
海野十三(うんの じゅうざ/じゅうぞう)
1897-1949
日本のSFの創始者とも言われる小説家。戦前から戦中にかけて多くの科学小説・探偵小説などを残した。
Wikipedia: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E9%87%8E%E5%8D%81%E4%B8%89
▼作品について
『三十年後の東京』は、昭和22年(1947年)に冷凍カプセルに入り、30年後の昭和52年(1977年)に目覚めた少年のお話。この作品自体が1947年に書かれており、30年後の世界の描写は、実際に終戦直後の混乱の中で作者が描いた未来像となっています。
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