ブンゴウメール公式ブログ

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2019-08-03

オツベルと象(3/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (605字。目安の読了時間:2分)  ところが何せ、器械はひどく廻っていて、籾は夕立か霰のように、パチパチ象にあたるのだ。 象はいかにもうるさいらしく、小さなその眼を細めていたが、またよく見ると、たしかに少しわらっていた。  オツベルはやっと覚悟をきめて、稲扱器械の前に出て、象に話をしようとしたが、そのとき象が、とてもきれいな、鶯みたいないい声で、こんな文句を云ったのだ。...

2019-08-02

オツベルと象(2/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (648字。目安の読了時間:2分)  そいつは象のことだから、たぶんぶらっと森を出て、ただなにとなく来たのだろう。  そいつが小屋の入口に、ゆっくり顔を出したとき、百姓どもはぎょっとした。 なぜぎょっとした? よくきくねえ、何をしだすか知れないじゃないか。 かかり合っては大へんだから、どいつもみな、いっしょうけんめい、じぶんの稲を扱いていた。  ところがそのときオツベ...

2019-08-01

オツベルと象(1/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (606字。目安の読了時間:2分)        ……ある牛飼いがものがたる 第一日曜  オツベルときたら大したもんだ。 稲扱器械の六台も据えつけて、のんのんのんのんのんのんと、大そろしない音をたててやっている。  十六人の百姓どもが、顔をまるっきりまっ赤にして足で踏んで器械をまわし、小山のように積まれた稲を片っぱしから扱いて行く。 藁はどんどんうしろの方へ投げられ...

2019-07-30

三十年後の東京(30/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (500字。目安の読了時間:1分) 風洞の中を、気密列車が砲弾のように遠く走っていく、というよりも飛んでいくのですな。十八時間でサンフランシスコへつくんですよ」 「そんなものができたんですか。航空路でもいけるんでしょう」 「空中旅行は、外敵の攻撃を受ける危険がありますからね。この地下鉄の方が安全なんです。なにしろ巨大なる原子力が使えるようになったから、昔の人にはとても考え...

2019-07-29

三十年後の東京(29/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (483字。目安の読了時間:1分) 海底へ都市をのばして行くのです。また海底を掘って、その下にある重要資源を掘りだしています。大昔も、炭鉱で海底に出ているのもありましたね。ああいうものがもっと大仕掛になったのです。人も住んでいます。街もあります。海底トンネルというのが昔、ありましたね。あれが大きくなっていったと考えてもいいでしょう」  正吉は海底都市から出かけて、ふたたび上...

2019-07-28

三十年後の東京(28/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (479字。目安の読了時間:1分) 「やあ、やっぱり水族館ですね」  うすあかるい青い光線のただよっている海水の中を、魚の群が元気よく泳ぎまわっている。 こんぶやわかめなどの海草の林が見え、岩の上にはなまこがはっている。 いそぎんちゃくも、手をひろげている。 「水族館だと思いますか」  区長さんが笑いかけた。 「よく見て下さい。今、燈火をつけて、遠くまで見えるよう...

2019-07-27

三十年後の東京(27/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (617字。目安の読了時間:2分) 昔は太陽の光と能率のわるい肥料で永くかかって栽培していましたが、今はそれに代って、適当なる化学線と電気とすぐれた植物ホルモンをあたえることによって、たいへんりっぱな、そして栄養になるものを短い期間に収穫できるようになりました。こんなきゅうりなら、花が咲いてから一日乃至二日で、もぎとってもいいほどの大きさになります。りんごでもかきでも、一週間...

2019-07-26

三十年後の東京(26/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (487字。目安の読了時間:1分) 地中では、太陽の光と熱とをもたらすことができないから、農作物が育つわけがない。 「ここです。はいりましょう」  大きなビルの中に案内された。 こんな会社のような建物の中に、いったいどんな農場があるのであろうか。  が、案内されて三十年後の地下農場を見せられたとき、正吉はあっとおどろいた。  かぼちゃも、きゅうりも、いねも昔の三等寝...

2019-07-25

三十年後の東京(25/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (527字。目安の読了時間:2分) 中でも一番苦しかったのは、食糧だった。 「ああ、そうそう」と正吉はいった。 「ねえ区長さん。田畑や果樹園はどうなっているのですか。地上を攻撃されるおそれがあるんなら、地上でおちおち畑をつくってもいられないでしょう」 「そうですとも。もう地上では稲を植えるわけにはいかないし、お芋やきゅうりやなすをつくることもできないです。そんなものをつ...

2019-07-24

三十年後の東京(24/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (500字。目安の読了時間:1分)    びっくり農場  思いがけない母親とのめぐりあいに、正吉少年はたいへん元気づいた。 見しらぬ世界のまっただ中へとびこんだひとりぼっちの心細さ――というようなものが、とたんに消えてしまった。 「これからどこへつれていって下さるのですか」  と、正吉はカニザワ区長やサクラ院長などをふりかえって、たずねた。 「君がびっくりするところ...

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