ブンゴウメール
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地中では、太陽の光と熱とをもたらすことができないから、農作物が育つわけがない。
「ここです。はいりましょう」
大きなビルの中に案内された。
こんな会社のような建物の中に、いったいどんな農場があるのであろうか。
が、案内されて三十年後の地下農場を見せられたとき、正吉はあっとおどろいた。
かぼちゃも、きゅうりも、いねも昔の三等寝台のように、何段も重なった棚の上にうえられていた。
みんなよく育っていた。
「このきゅうりを見てごらんなさい[#「ごらんなさい」は底本では「ごらんさい」]」
そこの技師からいわれて、正吉はそのきゅうりをみていた。
「おや、このきゅうりは動きますね。おやおや、どんどん大きくなる」
正吉はびっくりしたり、きみがわるくなったり、これは、おばけきゅうりだ。
「この頃の農作物は、みんなこのようなやり方で栽培しています。昔は太陽の光と能率のわるい肥料で永くかかって栽培していましたが、今はそれに代って、適当なる化学線と電気とすぐれた植物ホルモンをあたえることによって、たいへんりっぱな、そして栄養になるものを短い期間に収穫できるようになりました。
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