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2019-08-02

オツベルと象(2/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(648字。目安の読了時間:2分)

 そいつは象のことだから、たぶんぶらっと森を出て、ただなにとなく来たのだろう。

 そいつが小屋の入口に、ゆっくり顔を出したとき、百姓どもはぎょっとした。

なぜぎょっとした? よくきくねえ、何をしだすか知れないじゃないか。

かかり合っては大へんだから、どいつもみな、いっしょうけんめい、じぶんの稲を扱いていた。

 ところがそのときオツベルは、ならんだ器械のうしろの方で、ポケットに手を入れながら、ちらっと鋭く象を見た。

それからすばやく下を向き、何でもないというふうで、いままでどおり往ったり来たりしていたもんだ。

 するとこんどは白象が、片脚床にあげたのだ。

百姓どもはぎょっとした。

それでも仕事が忙しいし、かかり合ってはひどいから、そっちを見ずに、やっぱり稲を扱いていた。

 オツベルは奥のうすくらいところで両手をポケットから出して、も一度ちらっと象を見た。

それからいかにも退屈そうに、わざと大きなあくびをして、両手を頭のうしろに組んで、行ったり来たりやっていた。

ところが象が威勢よく、前肢二つつきだして、小屋にあがって来ようとする。

百姓どもはぎくっとし、オツベルもすこしぎょっとして、大きな琥珀のパイプから、ふっとけむりをはきだした。

それでもやっぱりしらないふうで、ゆっくりそこらをあるいていた。

 そしたらとうとう、象がのこのこ上って来た。

そして器械の前のとこを、呑気にあるきはじめたのだ。

 ところが何せ、器械はひどく廻っていて、籾は夕立か霰のように、パチパチ象にあたるのだ。

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