ブンゴウメール
(617字。目安の読了時間:2分)
昔は太陽の光と能率のわるい肥料で永くかかって栽培していましたが、今はそれに代って、適当なる化学線と電気とすぐれた植物ホルモンをあたえることによって、たいへんりっぱな、そして栄養になるものを短い期間に収穫できるようになりました。こんなきゅうりなら、花が咲いてから一日乃至二日で、もぎとってもいいほどの大きさになります。りんごでもかきでも、一週間でりっぱな実となります」
「おどろきましたね」
「そんなわけですから、昔とちがい、一年中いつでもきゅうりやかぼちゃがなります。またりんごもバナナもかきも、一年中いつでもならせることができます」
「すると、遅配だの飢餓だのということは、もう起らないのですね」
「えっ、なんとかおっしゃいましたか」
技師は正吉の質問が分らなくて問いかえした。
正吉は、気がついてその質問をひっこめた。
まちがいなく五十倍の増産がらくに出来る今の世の中に、遅配だの飢餓だのということが分らないのはあたり前だ。
海底都市
動く道路を降りて丘になっている一段高い公園みたいなところへあがった。
もちろん地中のことだから頭上には天井がある。
壁もある。
その広い壁のところどころに、大きな水族館の水槽ののぞき窓みたいに、横に長い硝子板のはまった窓があるのだった。
その窓から外をのぞいた。
「やあ、やっぱり水族館ですね」
うすあかるい青い光線のただよっている海水の中を、魚の群が元気よく泳ぎまわっている。
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