ブンゴウメール公式ブログ

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2020-05-26

ジャン・クリストフ(26/31)

(517字。目安の読了時間:2分) ゴットフリートはゆっくり煙草をすい、クリストフは夕闇が怖くて、小父に手をひかれていた。 彼等はよく草の上に坐(すわ)った。 ゴットフリートはしばらく黙ってたあとで、星や雲の話をしてくれた。 土や空気や水のいぶき、または闇の中にうごめいてる、飛んだりはったり泳いだりしている小さな生物の、歌や叫びや音、または晴天や雨の前兆、または夜の交響曲の...

2020-05-25

ジャン・クリストフ(25/31)

(514字。目安の読了時間:2分) 「小父さん、もう悲しまないでね。もう意地悪はしないよ。許しておくれよ。僕は小父さんが大好きだ!」しかし彼はいえなかった。 ――そしていきなり小父の腕の中にとびこんだ。 言葉は出なかった。 彼はただくり返した。 「僕は小父さんが好きだ!」そして心をこめて抱きついた。 ゴットフリートはびっくりし、感動して、「何だ、何だ?」とくり返しな...

2020-05-24

ジャン・クリストフ(24/31)

(498字。目安の読了時間:1分) 河の向こうの丘からは、鶯(うぐいす)のか弱い歌がひびいてきた。 「いったいどんなものを歌う必要があるのか?」ゴットフリートは長い間黙っていてから、ほっと息をしていった。 ――(自分に向かっていっているのか、クリストフに向かっていっているのか、よくわからなかった。)――「お前がどんな歌をつくろうと、ああいうものの方が一そう立派に歌っているじゃな...

2020-05-23

ジャン・クリストフ(23/31)

(496字。目安の読了時間:1分) ほかの時だったら、いつもばかにしている小父からあべこべにばかにされるなんて、我慢が出来なかったかもしれない。 それにまた理窟で自分をやりこめるほどゴットフリートが利口だなどとは、思いもよらないことだった。 彼はやり返してやる議論か悪口を考えたが、思いあたらなかった。 ゴットフリートは続けていった。 「もしお前が、ここからコブレンツまで...

2020-05-22

ジャン・クリストフ(22/31)

(475字。目安の読了時間:1分) 彼の頭は、祖父の教と子供らしい夢とで一ぱいになっていた。  ゴットフリートは穏かに笑った。 クリストフは少しむっとして尋ねた。 「なぜ笑うんだい!」  ゴットフリートはいった。 「ああ、おれは、おれはつまらない人間さ。」  そして子供の頭をやさしく撫(な)でながらきいた。 「お前は、偉い人になりたいんだね?」 「そうだ...

2020-05-21

ジャン・クリストフ(21/31)

(480字。目安の読了時間:1分)  どうして歌をつくるのさ。歌はつくるものじゃないよ。」  子供はいつもの論法でいいはった。 「でも、小父さん、一度は誰かがつくったにちがいないよ。」  ゴットフリートは頑として頭を振った。 「いつでもあったんだ。」  子供はいい進んだ。 「だって、小父さん、ほかの歌を、新しい歌を、つくることは出来るんじゃないか。」 「なぜ...

2020-05-20

ジャン・クリストフ(20/31)

(453字。目安の読了時間:1分) 「いつ出来たの?」 「わからないね。」 「小父さんの小さい時分にかい?」 「おれが生まれる前だ。おれのお父さんが生まれる前、お父さんのお父さんが生まれる前、お父さんのお父さんのそのまたお父さんが生まれる前だ……。この歌はいつでもあったんだよ。」 「変だね! 誰にもそんなこと聞いたことがないよ。」  彼はちょっと考えた。 「小父...

2020-05-19

ジャン・クリストフ(19/31)

(519字。目安の読了時間:2分) ゆるやかな単純な幼稚な歌で、重々しい寂しげな、そして少し単調な足どりで、決して急がずに進んでゆく――時々長い間やすんで――それからまた行方もかまわず進み出し、夜のうちに消えていった。 ごく遠いところからやって来るようでもあるし、どこへ行くのかわからなくもあった。 朗かではあるが、なやましいものがこもっていた。 表面は平和だったが、下には長...

2020-05-18

ジャン・クリストフ(18/31)

(504字。目安の読了時間:2分) ゴットフリートの顔にうかんでる神秘的な感じに、クリストフも引きこまれていった。 地面は影におおわれており、空はあかるかった。 星がきらめきだしていた。 河の小波が岸にひたひた音をたてていた。 クリストフは気がぼうとして来た。 目にも見ないで、草の小さな茎をかみきっていた。 蟋蟀(こおろぎ)が一匹そばで鳴いていた。 彼は眠り...

2020-05-17

ジャン・クリストフ(17/31)

(519字。目安の読了時間:2分) クリストフはほかにすることもなかったので、あとからついていった。 そしていつもの通り、子犬のようにじゃれついていじめた揚句、とうとう息を切らして、小父の足もとの草の上にねころんだ。 腹ばいになって芝生に顔をうずめた。 息切れがとまると、また何か悪口をいってやろうと考えた。 そして悪口が見つかったので、やはり顔を地面に埋めたまま、笑いこ...

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