(973字。目安の読了時間:2分) 上の方へ手をやってみますと、天井もすぐ手のとどくところにありましたが、そこにも抜け出られるようなところが一つもありません。 あんまりの奇妙さに、姫はボンヤリして、石の床の上に坐わっていました。 すると間もなく向うにあかりがさして、お父様の王様と二人の兵隊が見えまして、牢屋の入り口を外から開かれました。 お父様は思いがけなくニコニコしながら、こう云...
(889字。目安の読了時間:2分) 只逃げる道が一つあるきりです」 「えっ、まだ逃げる道があるのですか」 「ありますとも。あなたはさっき崖から飛び降りる時に持っておられた落下傘を持っておいででしょう」 「あっ。持っています、持っています」 「それを持って飛げるのです」 と云いながら、王子は鉄の塔の絶頂の窓のところからお城の方を向いてこう叫びました。 「お父様、お母様、私がわるう御...
いつもブンゴウメールをご利用いただきありがとうございます。 今日はブンゴウメール初のコラボ配信開始のお知らせ(再掲)と、ブンゴウメールの件名表記などの変更についてお知らせします。 \=============================== 【1】 『ALTER EGO(オルタエゴ)』公式チャネルの配信を4月1日から開始します! \==========================...
(944字。目安の読了時間:2分) それを見ていたオシャベリ姫は、急いで梯子段を降りて、王子の傍に行こうとしましたが、その時は何だかお城の中が急に騒々しくなったようで、風の音のきれ目きれ目に沢山の人の足音がするようですから、姫は外をのぞいて見ますと、大変です。 沢山の兵隊が手に手に短刀を持って、この塔の方へ押しかけて来るようです。 これを見た姫は思わず上から叫びました。 「王子様、...
(952字。目安の読了時間:2分) あなたの国の人はお話はするでしょうけれども、嘘は云わないでしょう」 「ええ、嘘を云うものは一人もおりません」 「それに何だってあなたのお付の女中は嘘を云ったのでしょう。あなたから短刀と蜘蛛のお話をきいていながら、なぜそれをきかないなぞ云って、あなたのお父様を怒らして、あなたを石の牢屋へ入れさせたのでしょう」 「そうですわねえ。私は今でもそれを不思議と思...
(877字。目安の読了時間:2分) それを私がここまで荷いで来て解いて上げたのです……サアこれで私のお話はおしまいです。今度はあなたがお話しをなさる番です」 「え……私がお話をする番ですって?……」 「そうです。いったいあなたはどうしてこの国へお出でになったのですか? あなたはいったいどこの国のおかたですか?」 姫はこう尋ねられますと、急に恥かしくなって顔を真赤にしましたけれども、自分...
(877字。目安の読了時間:2分) それを私がここまで荷いで来て解いて上げたのです……サアこれで私のお話はおしまいです。今度はあなたがお話しをなさる番です」 「え……私がお話をする番ですって?……」 「そうです。いったいあなたはどうしてこの国へお出でになったのですか? あなたはいったいどこの国のおかたですか?」 姫はこう尋ねられますと、急に恥かしくなって顔を真赤にしましたけれども、自分...
(1063字。目安の読了時間:3分) そうして父の王が狩猟に行きますと、その留守に母の妃は私をつれて、地の下の窖(あなぐら)に連れて行って、口の繃帯を解いてやりまして、私の口に手を当ていろいろ物の云い方を教えてくれましたので、私は十歳ばかりの時にはもう立派にお話が出来るようになっていました」 「ほんとにお母様は教えることがお上手なのですね」 「けれどもある日の事、とうとう私のオシャベリのお...
(892字。目安の読了時間:2分) あの花さえ無ければ、私はあんなにほかの国へ行かなくともよかったのに。そうしてこんなに恥かしい、口惜しい思いをせずともよかったのに』 と思いますと、もうクチナシの花やそのにおいがいやでしようがありませんでした。 『ああ。あの花がなくなったらどんなにかいいだろう』 と思うようになりました。けれども国中のクチナシはなかなか枯れません。 そのうちにクチ...
(914字。目安の読了時間:2分) 「クチナシ姫は、何の気もなしにその国へズンズン這入って行きますと、その国の人がだれもかれも面白そうにお話をしているのにビックリしました。 クチナシ姫はそのお話をしているようすと、そのことばをおもしろがって、次から次へときいて行くうちに、すっかりおぼえてしまいました。そうして自分も話してみたくなりましたが、口が利けないのでどうも出来ません。 それから歌...