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只逃げる道が一つあるきりです」
「えっ、まだ逃げる道があるのですか」
「ありますとも。あなたはさっき崖から飛び降りる時に持っておられた落下傘を持っておいででしょう」
「あっ。持っています、持っています」
「それを持って飛げるのです」
と云いながら、王子は鉄の塔の絶頂の窓のところからお城の方を向いてこう叫びました。
「お父様、お母様、私がわるう御座いました。よけいなことをオシャベリして大層御心配をかけました。私はこれから姫と一所によその国へ行きます。けれどもこれから決してオシャベリはしません。本当に見たりきいたりしたことでも、よけいなことはお話しをしないようにいたしますから、どうぞ御安心下さいますように。さようなら、御機嫌よう」
こう云ううちに王子は、塔の床の上に手を突いて、涙を流しながらお暇乞いをしました。
オシャベリ姫もだまって涙をこぼしながら、手を突いてお暇乞いをしました。
そうして二人は落下傘の紐をしっかりと掴んで、塔の上から下を目がけて飛び降りました。
二人の身体はやがて落下傘のおかげでフンワリと空中に浮かみました。
それと一所に烈しく吹く風につれて、大空高く高く高く舞い上りましたが、その中に雨がバラバラと降り出しました。
そうすると又大変です。
落下傘は紙で作ってあった物とみえまして、見る見るうちにバラバラに破れてしまいましたからたまりません。
二人は抱き合ったまま流星のように早く、下界の方へ落ちて行きました。
「アレッ。助けて」
と姫は思わず大きな声で叫びましたが、その自分の声に驚いて眼をさましますと、どうでしょう。
今までのはスッカリ夢で、姫はやっぱり自分のお城の石の牢屋の中に寝ているのでした。
姫はどちらが夢だかわからなくなってしまいました。
あんまりの不思議さに、立ち上って石の牢屋の四方を撫でまわしてみましたが、四方はつめたい石で穴も何もありません。
上の方へ手をやってみますと、天井もすぐ手のとどくところにありましたが、そこにも抜け出られるようなところが一つもありません。
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