ブンゴウメール公式ブログ

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2019-11-15

武蔵野(15/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (595字。目安の読了時間:2分) 野原の径を歩みてはかかるいみじき想いも起こるならんが、武蔵野の路はこれとは異り、相逢わんとて往くとても逢いそこね、相避けんとて歩むも林の回り角で突然出逢うことがあろう。 されば路という路、右にめぐり左に転じ、林を貫き、野を横ぎり、真直なること鉄道線路のごときかと思えば、東よりすすみてまた東にかえるような迂回の路もあり、林にかくれ、谷にかく...

2019-11-14

武蔵野(14/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (611字。目安の読了時間:2分) 萱原の一端がしだいに高まって、そのはてが天ぎわをかぎっていて、そこへ爪先あがりに登ってみると、林の絶え間を国境に連なる秩父の諸嶺が黒く横たわッていて、あたかも地平線上を走ってはまた地平線下に没しているようにもみえる。 さてこれよりまた畑のほうへ下るべきか。 あるいは畑のかなたの萱原に身を横たえ、強く吹く北風を、積み重ねた枯草で避けながら...

2019-11-13

武蔵野(13/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (660字。目安の読了時間:2分) しかし大洋のうねりのように高低起伏している。 それも外見には一面の平原のようで、むしろ高台のところどころが低く窪んで小さな浅い谷をなしているといったほうが適当であろう。 この谷の底はたいがい水田である。 畑はおもに高台にある、高台は林と畑とでさまざまの区劃をなしている。 畑はすなわち野である。 されば林とても数里にわたるものなく否...

2019-11-12

武蔵野(12/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (579字。目安の読了時間:2分) 黄いろくからびた刈株をわたッて烈しく吹きつける野分に催されて、そりかえッた細かな落ち葉があわただしく起き上がり、林に沿うた往来を横ぎって、自分の側を駈け通ッた、のらに向かッて壁のようにたつ林の一面はすべてざわざわざわつき、細末の玉の屑を散らしたように煌きはしないがちらついていた。また枯れ草、莠、藁の嫌いなくそこら一面にからみついた蜘蛛の巣は...

2019-11-11

武蔵野(11/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (668字。目安の読了時間:2分) なかば黄いろくなかば緑な林の中に歩いていると、澄みわたった大空が梢々の隙間からのぞかれて日の光は風に動く葉末葉末に砕け、その美しさいいつくされず。 日光とか碓氷とか、天下の名所はともかく、武蔵野のような広い平原の林が隈なく染まって、日の西に傾くとともに一面の火花を放つというも特異の美観ではあるまいか。 もし高きに登りて一目にこの大観を占...

2019-11-11

武蔵野(11/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (668字。目安の読了時間:2分) なかば黄いろくなかば緑な林の中に歩いていると、澄みわたった大空が梢々の隙間からのぞかれて日の光は風に動く葉末葉末に砕け、その美しさいいつくされず。 日光とか碓氷とか、天下の名所はともかく、武蔵野のような広い平原の林が隈なく染まって、日の西に傾くとともに一面の火花を放つというも特異の美観ではあるまいか。 もし高きに登りて一目にこの大観を占...

2019-11-10

武蔵野(10/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (635字。目安の読了時間:2分) 自分がかつて北海道の深林で時雨に逢ったことがある、これはまた人跡絶無の大森林であるからその趣はさらに深いが、その代り、武蔵野の時雨のさらに人なつかしく、私語くがごとき趣はない。  秋の中ごろから冬の初め、試みに中野あたり、あるいは渋谷、世田ヶ谷、または小金井の奥の林を訪うて、しばらく座って散歩の疲れを休めてみよ。 これらの物音、たちまち...

2019-11-09

武蔵野(9/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (564字。目安の読了時間:2分)  鳥の羽音、囀る声。 風のそよぐ、鳴る、うそぶく、叫ぶ声。 叢の蔭、林の奥にすだく虫の音。 空車荷車の林を廻り、坂を下り、野路を横ぎる響。 蹄で落葉を蹶散らす音、これは騎兵演習の斥候か、さなくば夫婦連れで遠乗りに出かけた外国人である。 何事をか声高に話しながらゆく村の者のだみ声、それもいつしか、遠ざかりゆく。 独り淋しそうに道を...

2019-11-09

武蔵野(9/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (564字。目安の読了時間:2分)  鳥の羽音、囀る声。 風のそよぐ、鳴る、うそぶく、叫ぶ声。 叢の蔭、林の奥にすだく虫の音。 空車荷車の林を廻り、坂を下り、野路を横ぎる響。 蹄で落葉を蹶散らす音、これは騎兵演習の斥候か、さなくば夫婦連れで遠乗りに出かけた外国人である。 何事をか声高に話しながらゆく村の者のだみ声、それもいつしか、遠ざかりゆく。 独り淋しそうに道を...

2019-11-08

武蔵野(8/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (638字。目安の読了時間:2分) …りおり日の光りが今ま雨に濡れたばかりの細枝の繁みを漏れて滑りながらに脱けてくるのをあびては、キラキラときらめいた」  すなわちこれはツルゲーネフの書きたるものを二葉亭が訳して「あいびき」と題した短編の冒頭にある一節であって、自分がかかる落葉林の趣きを解するに至ったのはこの微妙な叙景の筆の力が多い。 これはロシアの景でしかも林は樺の木で...

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