ブンゴウメール
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しかし大洋のうねりのように高低起伏している。
それも外見には一面の平原のようで、むしろ高台のところどころが低く窪んで小さな浅い谷をなしているといったほうが適当であろう。
この谷の底はたいがい水田である。
畑はおもに高台にある、高台は林と畑とでさまざまの区劃をなしている。
畑はすなわち野である。
されば林とても数里にわたるものなく否、おそらく一里にわたるものもあるまい、畑とても一眸数里に続くものはなく一座の林の周囲は畑、一頃の畑の三方は林、というような具合で、農家がその間に散在してさらにこれを分割している。
すなわち野やら林やら、ただ乱雑に入組んでいて、たちまち林に入るかと思えば、たちまち野に出るというような風である。
それがまたじつに武蔵野に一種の特色を与えていて、ここに自然あり、ここに生活あり、北海道のような自然そのままの大原野大森林とは異なっていて、その趣も特異である。
稲の熟するころとなると、谷々の水田が黄ばんでくる。
稲が刈り取られて林の影が倒さに田面に映るころとなると、大根畑の盛りで、大根がそろそろ抜かれて、あちらこちらの水溜めまたは小さな流れのほとりで洗われるようになると、野は麦の新芽で青々となってくる。
あるいは麦畑の一端、野原のままで残り、尾花野菊が風に吹かれている。
萱原の一端がしだいに高まって、そのはてが天ぎわをかぎっていて、そこへ爪先あがりに登ってみると、林の絶え間を国境に連なる秩父の諸嶺が黒く横たわッていて、あたかも地平線上を走ってはまた地平線下に没しているようにもみえる。
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