ブンゴウメール公式ブログ

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2018-12-23

【ブンゴウメール】大つごもり (23/31)

(361字。目安の読了時間:1分) これは大晦日とて遠慮のならぬ物なり、家のうちには金もあり、放蕩どのが寐(ね)てはいる、心は二つ、分けられぬ身なれば恩愛の重きに引かれて、車には乗りけれど、かかる時気楽の良人が心根にくく、今日あたり沖釣りでも無き物をと、太公望がはり合ひなき人をつくづくと恨みて御新造いでられぬ。  行ちがへに三之助、此処と聞きたる白金台町[#「白金台町」は底本では「白銀台町」...

2018-12-22

【ブンゴウメール】大つごもり (22/31)

(360字。目安の読了時間:1分) しかも口づから承知して置きながら十日とたたぬに耄(もう)ろくはなさるまじ、あれあの懸け硯(すずり)の引出しにも、これは手つかずの分と一ト束、十か二十か悉皆とは言はず唯二枚にて伯父が喜び伯母が笑顔、三之助に雑煮のはしも取らさるると言はれしを思ふにも、どうでも欲しきはあの金ぞ、恨めしきは御新造とお峯は口惜しさに物も言はれず、常々をとなしき身は理屈づめにやり込る術...

2018-12-21

【ブンゴウメール】大つごもり (21/31)

(345字。目安の読了時間:1分) それはお前が何ぞの聞違へ、私は毛頭も覚えの無き事と、これがこの人の十八番とはてもさても情なし。  花紅葉うるはしく仕立し娘たちが春着の小袖、襟をそろへて褄(つま)を重ねて、眺めつ眺めさせて喜ばんものを、邪魔ものの兄が見る目うるさし、早く出てゆけ疾く去ねと思ふ思ひは口にこそ出さね、もち前の疳癪(かんしやく)したに堪えがたく、智識の坊さまが目に御覧じたらば、炎...

2018-12-20

【ブンゴウメール】大つごもり (20/31)

(336字。目安の読了時間:1分) このほどより願ひましたる事、折からお忙がしき時心なきやうなれど、今日の昼る過ぎにと先方へ約束のきびしき金とやら、お助けの願はれますれば伯父の仕合せ私の喜び、いついつまでも御恩に着まするとて手をすりて頼みける、最初いひ出し時にやふやながら結局は宜しと有し言葉を頼みに、又の機嫌むつかしければ五月蠅いひては却りて如何と今日までも我慢しけれど、約束は今日と言ふ大晦日...

2018-12-19

【ブンゴウメール】大つごもり (19/31)

(347字。目安の読了時間:1分) やがて巻きあげて貴様たちに好き正月をさせるぞと、伊皿子あたりの貧乏人を喜ばして、大晦日を当てに大呑みの場処もさだめぬ。  それ兄様のお帰りと言へば、妹ども怕(こわ)がりて腫れ物のやうに障るものなく、何事も言ふなりの通るに一段と我がままをつのらして、炬燵(こたつ)に両足、酔ざめの水を水をと狼藉(らうぜき)はこれに止めをさしぬ、憎くしと思へどさすがに義理は愁ら...

2018-12-18

【ブンゴウメール】大つごもり (18/31)

(356字。目安の読了時間:1分) さりとて此放蕩子を養子にと申受る人この世にはあるまじ、とかくは有金の何ほどを分けて、若隠居の別戸籍にと内々の相談は極まりたれど、本人うわの空に聞流して手に乗らず、分配金は一万、隠居扶持月々おこして、遊興に関を据へず、父上なくならば親代りの我れ、兄上と捧(ささ)げて竈(かまど)の神の松一本も我が託宣を聞く心ならば、いかにもいかにも別戸の御主人に成りて、この家の...

2018-12-17

【ブンゴウメール】大つごもり (17/31)

(335字。目安の読了時間:1分) 母の違ふに父親の愛も薄く、これを養子に出して家督は妹娘の中にとの相談、十年の昔しより耳に挟みて面白からず、今の世に勘当のならぬこそをかしけれ、思ひのままに遊びて母が泣きをと父親の事は忘れて、十五の春より不了簡をはじめぬ、男振にがみありて利発らしき眼ざし、色は黒けれど好き様子とて四隣の娘どもが風説も聞えけれど、唯乱暴一途に品川へも足は向くれど騒ぎはその座ぎり、...

2018-12-16

【ブンゴウメール】大つごもり (16/31)

(350字。目安の読了時間:1分) よろしう御座んす慥(たし)かに受合ひました、むづかしくはお給金の前借にしてなり願ひましよ、見る目と家内とは違ひて何処にも金銭の埒(らち)は明きにくけれど、多くでは無しそれだけで此処の始末がつくなれば、理由を聞いて厭やは仰せらるまじ、それにつけても首尾そこなうては成らねば、今日は私は帰ります、又の宿下りは春永、その頃には皆々うち寄つて笑ひたきもの、とて此金を受...

2018-12-15

【ブンゴウメール】大つごもり (15/31)

(348字。目安の読了時間:1分) この中にて何となるべきぞ、額を合せて談合の妻は人仕事に指先より血を出して日に拾銭の稼ぎも成らず、三之助に聞かするとも甲斐なし、お峯が主は白金の台町に貸長屋の百軒も持ちて、あがり物ばかりに常綺羅美々しく、我れ一度お峯への用事ありて門まで行きしが、千両にては出来まじき土蔵の普請、羨やましき富貴と見たりし、その主人に一年の馴染、気に入りの奉公人が少々の無心を聞かぬ...

2018-12-14

【ブンゴウメール】大つごもり (14/31)

(340字。目安の読了時間:1分) と言ふて帰られる物では無し、初奉公が肝腎、辛棒がならで戻つたと思はれても成らねば、お主大事に勤めてくれ、我が病気も長くは有るまじ、少しよくば気の張弓、引つづいて商ひもなる道理、ああ今半月の今歳が過れば新年は好き事も来たるべし、何事も辛棒々々、三之助も辛棒してくれ、お峯も辛棒してくれとて涙を納めぬ。 珍らしき客に馳走は出来ねど好物の今川焼、里芋の煮ころがしな...

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