ブンゴウメール公式ブログ

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2018-12-13

【ブンゴウメール】大つごもり (13/31)

(337字。目安の読了時間:1分) さてもさても世間に無類の孝行、大がらとても八歳は八歳、天秤肩にして痛みはせぬか、足に草鞋くひは出来ぬかや、堪忍して下され、今日よりは私も家に帰りて伯父様の介抱活計の助けもしまする、知らぬ事とて今朝までも釣瓶の縄の氷を愁らがつたは勿躰(もつたい)ない、学校ざかりの年に蜆を担がせて姉が長い着物きてゐらりようか、伯父さま暇を取つて下され、私は最早奉公はよしますると...

2018-12-12

【ブンゴウメール】大つごもり (12/31)

(344字。目安の読了時間:1分) お峯聞いてくれ、歳は八つなれど身躰も大きし力もある、我が寐(ね)てからは稼ぎ人なしの費用は重なる、四苦八苦見かねたやら、表の塩物やが野郎と一処に、蜆(しじみ)を買ひ出しては足の及ぶだけ担ぎ廻り、野郎が八銭うれば十銭の商ひは必らずある、一つは天道さまが奴の孝行を見徹してか、となりかくなり薬代は三が働き、お峯ほめて遣つてくれとて、父は蒲団をかぶりて涙に声をしぼり...

2018-12-11

【ブンゴウメール】大つごもり (11/31)

(331字。目安の読了時間:1分) 下なる奴に物いひつけんと振向く途端、暦に黒ぼしの仏滅とでも言ふ日で有しか、年来馴(な)れたる足場をあやまりて、落たるも落たるも下は敷石に模様がへの処ありて、掘おこして積みたてたる切角に頭脳したたか打ちつけたれば甲斐なし、哀れ四十二の前厄と人々後に恐ろしがりぬ、母は安兵衛が同胞なれば此処に引取られて、これも二年の後はやり風俄かに重く成りて亡せたれば、後は安兵衛...

2018-12-10

【ブンゴウメール】大つごもり (10/31)

(351字。目安の読了時間:1分) 伯父様に何ぞと存じたれど、道は遠し心は急く、車夫の足が何時より遅いやうに思はれて、御好物の飴屋が軒も見はぐりました、此金は少々なれど私が小遣の残り、麹町の御親類よりお客の有し時、その御隠居さま寸白のお起りなされてお苦しみの有しに、夜を徹してお腰をもみたれば、前垂でも買へとて下された、それや、これや、お家は堅けれど他処よりのお方が贔負になされて、伯父さま喜んで...

2018-12-09

【ブンゴウメール】大つごもり (9/31)

(331字。目安の読了時間:1分) 箪笥(たんす)長持はもとより有るべき家ならねど、見し長火鉢のかげも無く、今戸焼の四角なるを同じ形の箱に入れて、これがそもそもこの家の道具らしき物、聞けば米櫃も無きよし、さりとは悲しき成ゆき、師走の空に芝居みる人も有るをとお峯はまづ涙ぐまれて、まづまづ風の寒きに寝てお出なされませ、と堅焼に似し薄蒲団を伯父の肩に着せて、さぞさぞ沢山の御苦労なさりましたろ、伯母様...

2018-12-08

【ブンゴウメール】大つごもり (8/31)

(362字。目安の読了時間:1分) 凧(たこ)紙風船などを軒につるして、子供を集めたる駄菓子やの門に、もし三之助の交じりてかと覗(のぞ)けど、影も見えぬに落胆して思はず徃来を見れば、我が居るよりは向ひのがはを痩ぎすの子供が薬瓶もちて行く後姿、三之助よりは丈も高く余り痩せたる子と思へど、様子の似たるにつかつかと駆け寄りて顔をのぞけば、やあ姉さん、あれ三ちやんで有つたか、さても好い処でと伴なはれて...

2018-12-07

【ブンゴウメール】大つごもり (7/31)

(344字。目安の読了時間:1分) 苞(つと)に松茸の初物などは持たで、八百安が物は何時も帳面につけた様なと笑はるれど、愛顧は有がたきもの、曲りなりにも親子三人の口をぬらして、三之助とて八歳になるを五厘学校に通はするほどの義務もしけれど、世の秋つらし九月の末、俄(には)かに風が身にしむといふ朝、神田に買出しの荷を我が家までかつぎ入れるとそのまま、発熱につづいて骨病みの出しやら、三月ごしの今日ま...

2018-12-06

【ブンゴウメール】大つごもり (6/31)

(335字。目安の読了時間:1分) 父母なき後は唯一人の大切な人が、病ひの床に見舞ふ事もせで、物見遊山に歩くべき身ならず、御機嫌に違ひたらばそれまでとして遊びの代りのお暇を願ひしにさすがは日頃の勤めぶりもあり、一日すぎての次の日、早く行きて早く帰れと、さりとは気ままの仰せに有難うぞんじますと言ひしは覚えで、頓ては車の上に小石川はまだかまだかと鈍かしがりぬ。  初音町といへば床しけれど、世をう...

2018-12-05

【ブンゴウメール】大つごもり (5/31)

(355字。目安の読了時間:1分) 同じ町ながら裏屋住居に成しよしは聞けど、むづかしき主を持つ身の給金を先きに貰(もら)へばこの身は売りたるも同じ事、見舞にと言ふ事も成らねば心ならねど、お使ひ先の一寸の間とても時計を目当にして幾足幾町とそのしらべの苦るしさ、馳(は)せ抜けても、とは思へど悪事千里といへば折角の辛棒を水泡にして、お暇ともならば弥々病人の伯父に心配をかけ、痩世帯に一日の厄介も気の毒...

2018-12-04

【ブンゴウメール】大つごもり (4/31)

(344字。目安の読了時間:1分) 主の物とて粗末に思ふたら罸(ばち)が当るぞえと明け暮れの談義、来る人毎に告げられて若き心には恥かしく、その後は物ごとに念を入れて、遂ひに麁想をせぬやうに成りぬ、世間に下女つかふ人も多けれど、山村ほど下女の替る家は有るまじ、月に二人は平常の事、三日四日に帰りしもあれば一夜居て逃出しもあらん、開闢以来を尋ねたらば折る指にあの内儀さまが袖口おもはるる、思へばお峯(...

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