ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」の公式ブログです。

2019-09-19

老妓抄(19/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (562字。目安の読了時間:2分)  そういう場合、未成熟の娘の心身から、利かん気を僅かに絞り出す、病鶏のささ身ほどの肉感的な匂いが、柚木には妙に感覚にこたえて、思わず肺の底へ息を吸わした。 だが、それは刹那的のものだった。 心に打ち込むものはなかった。  若い芸妓たちは、娘の挑戦を快くは思わなかったらしいが、大姐さんの養女のことではあり、自分達は職業的に来ているのだか...

2019-09-18

ブンゴウメールPRO版 サービス終了のお知らせ

(このメールはブンゴウメールPROにご登録いただいた方にお送りしております) いつもブンゴウメールPROをご利用ありがとうございます。 大変残念なお知らせですが、11月末をもってブンゴウメールPROのサービスを一旦終了することとなりました。以下詳細をお知らせいたしますが、ご不明な点などあればいつでも運営までお問い合わせください。 (無料版ブンゴウメールの配信は今後も引き続き継続いたします...

2019-09-18

老妓抄(18/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (630字。目安の読了時間:2分) 「いつ死のうかと逢う度毎に相談しながら、のびのびになっているうちに、ある日川の向うに心中態の土左衛門が流れて来たのだよ。人だかりの間から熟々眺めて来て男は云ったのさ。心中ってものも、あれはざまの悪いものだ。やめようって」 「あたしは死んでしまったら、この男にはよかろうが、あとに残る旦那が可哀想だという気がして来てね。どんな身の毛のよだつよ...

2019-09-17

老妓抄(17/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (608字。目安の読了時間:2分) 顔は少し横向きになっていたので、厚く白粉をつけて、白いエナメルほど照りを持つ頬から中高の鼻が彫刻のようにはっきり見えた。  老妓は船の中の仕切りに腰かけていて、帯の間から煙草入れとライターを取出しかけながら 「いい景色だね」と云った。  円タクに乗ったり、歩いたりして、一行は荒川放水路の水に近い初夏の景色を見て廻った。 工場が殖え、...

2019-09-16

老妓抄(16/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (607字。目安の読了時間:2分) 生れてこんなこと始めてだ」 「麦とろの食べ過ぎかね」老妓は柚木がよく近所の麦飯ととろろを看板にしている店から、それを取寄せて食べるのを知っているものだから、こうまぜっかえしたが、すぐ真面目になり「そんなときは、何でもいいから苦労の種を見付けるんだね。苦労もほどほどの分量にゃ持ち合せているもんだよ」  それから二三日経って、老妓は柚木を外...

2019-09-15

老妓抄(15/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (646字。目安の読了時間:2分) 「おまえさんは、この頃、どうかおしかえ」  と老妓はしばらく柚木をじろじろ見ながらいった。 「いいえさ、勉強しろとか、早く成功しろとか、そんなことをいうんじゃないよ。まあ、魚にしたら、いきが悪くなったように思えるんだが、どうかね。自分のことだけだって考え剰っている筈の若い年頃の男が、年寄の女に向って年齢のことを気遣うのなども、もう皮肉に...

2019-09-14

老妓抄(14/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (556字。目安の読了時間:2分) …中の皺を足の裏へ、括って溜めているという評判だが、あんたなんかまだその必要はなさそうだなあ」  老妓の眼はぎろりと光ったが、すぐ微笑して 「あたしかい、さあ、もうだいぶ年越の豆の数も殖えたから、前のようには行くまいが、まあ試しに」といって、老妓は左の腕の袖口を捲って柚木の前に突き出した。 「あんたがだね。ここの腕の皮を親指と人差指で...

2019-09-13

老妓抄(13/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (672字。目安の読了時間:2分) そしてそれだけで自分の慰楽は充分満足だった。 柚木は二三度職業仲間に誘われて、女道楽をしたこともあるが、売もの、買いもの以上に求める気は起らず、それより、早く気儘の出来る自分の家へ帰って、のびのびと自分の好みの床に寝たい気がしきりに起った。 彼は遊びに行っても外泊は一度もしなかった。 彼は寝具だけは身分不相応のものを作っていて、羽根蒲...

2019-09-12

老妓抄(12/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (570字。目安の読了時間:2分) 実際専門家から見ればいいものなのだが、一向社会に行われない結構な発明があるかと思えば、ちょっとした思付きのもので、非常に当ることもある。 発明にはスペキュレーションを伴うということも、柚木は兼ね兼ね承知していることではあったが、その運びがこれほど思いどおり素直に行かないものだとは、実際にやり出してはじめて痛感するのだった。  しかし、そ...

2019-09-11

老妓抄(11/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (575字。目安の読了時間:2分) …は二三度膝を上げ下げしたが 「結婚適齢期にしちゃあ、情操のカンカンが足りないね」 「そんなことはなくってよ、学校で操行点はAだったわよ」  みち子は柚木のいう情操という言葉の意味をわざと違えて取ったのか、本当に取り違えたものか――  柚木は衣服の上から娘の体格を探って行った。 それは栄養不良の子供が一人前の女の嬌態をする正体を発...

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