ブンゴウメール公式ブログ

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2019-12-03

黒猫(3/30)

(387字。目安の読了時間:1分) 私はたいていそれらの生きものを相手にして時を過し、それらに食物をやったり、それらを愛撫したりするときほど楽しいことはなかった。 この特質は成長するとともにだんだん強くなり、大人になってからは自分の主な楽しみの源泉の一つとなったのであった。 忠実な利口な犬をかわいがったことのある人には、そのような愉快さの性質や強さをわざわざ説明する必要はほとん...

2019-12-02

黒猫(2/30)

(376字。目安の読了時間:1分) 私にはそれはただもう恐怖だけを感じさせた。 ――多くの人々には恐ろしいというよりも怪奇なものに見えるであろう。 今後、あるいは、誰か知者があらわれてきて、私の幻想を単なる平凡なことにしてしまうかもしれぬ。 ――誰か私などよりももっと冷静な、もっと論理的な、もっとずっと興奮しやすくない知性人が、私が畏怖をもって述べる事がらのなかに、ごく自然...

2019-12-01

黒猫(1/30)

(369字。目安の読了時間:1分)  私がこれから書こうとしているきわめて奇怪な、またきわめて素朴な物語については、自分はそれを信じてもらえるとも思わないし、そう願いもしない。 自分の感覚でさえが自分の経験したことを信じないような場合に、他人に信じてもらおうなどと期待するのは、ほんとに正気の沙汰とは言えないと思う。 だが、私は正気を失っている訳ではなく、――また決して夢みている...

2019-11-30

武蔵野(30/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (547字。目安の読了時間:2分)  見たまえ、鍛冶工の前に二頭の駄馬が立っているその黒い影の横のほうで二三人の男が何事をかひそひそと話しあっているのを。 鉄蹄の真赤になったのが鉄砧の上に置かれ、火花が夕闇を破って往来の中ほどまで飛んだ。 話していた人々がどっと何事をか笑った。 月が家並の後ろの高い樫の梢まで昇ると、向う片側の家根が白ろんできた。  かんてらから黒い油...

2019-11-29

武蔵野(29/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (679字。目安の読了時間:2分) …まり東京市街の一端、あるいは甲州街道となり、あるいは青梅道となり、あるいは中原道となり、あるいは世田ヶ谷街道となりて、郊外の林地田圃に突入する処の、市街ともつかず宿駅ともつかず、一種の生活と一種の自然とを配合して一種の光景を呈しおる場処を描写することが、すこぶる自分の詩興を喚び起こすも妙ではないか。 なぜかような場処が我らの感を惹くだら...

2019-11-28

武蔵野(28/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (553字。目安の読了時間:2分) かの橋の上には村のもの四五人集まっていて、欄に倚って何事をか語り何事をか笑い、何事をか歌っていた。 その中に一人の老翁がまざっていて、しきりに若い者の話や歌をまぜッかえしていた。 月はさやかに照り、これらの光景を朦朧たる楕円形のうちに描きだして、田園詩の一節のように浮かべている。 自分たちもこの画中の人に加わって欄に倚って月を眺めてい...

2019-11-27

武蔵野(27/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (583字。目安の読了時間:2分)  小金井の流れのごとき、その一である。 この流れは東京近郊に及んでは千駄ヶ谷、代々木、角筈などの諸村の間を流れて新宿に入り四谷上水となる。 また井頭池善福池などより流れ出でて神田上水となるもの。 目黒辺を流れて品海に入るもの。 渋谷辺を流れて金杉に出ずるもの。 その他名も知れぬ細流小溝に至るまで、もしこれをよそで見るならば格別の妙...

2019-11-26

武蔵野(26/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (534字。目安の読了時間:2分) この範囲の間に所沢、田無などいう駅がどんなに趣味が多いか……ことに夏の緑の深いころは。 さて立川からは多摩川を限界として上丸辺まで下る。 八王子はけっして武蔵野には入れられない。 そして丸子から下目黒に返る。 この範囲の間に布田、登戸、二子などのどんなに趣味が多いか。 以上は西半面。  東の半面は亀井戸辺より小松川へかけ木下川か...

2019-11-26

武蔵野(26/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (534字。目安の読了時間:2分) この範囲の間に所沢、田無などいう駅がどんなに趣味が多いか……ことに夏の緑の深いころは。 さて立川からは多摩川を限界として上丸辺まで下る。 八王子はけっして武蔵野には入れられない。 そして丸子から下目黒に返る。 この範囲の間に布田、登戸、二子などのどんなに趣味が多いか。 以上は西半面。  東の半面は亀井戸辺より小松川へかけ木下川か...

2019-11-25

武蔵野(25/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール (597字。目安の読了時間:2分) 六つ玉川などと我々の先祖が名づけたことがあるが武蔵の多摩川のような川が、ほかにどこにあるか。 その川が平らな田と低い林とに連接する処の趣味は、あだかも首府が郊外と連接する処の趣味とともに無限の意義がある。  また東のほうの平面を考えられよ。 これはあまりに開けて水田が多くて地平線がすこし低いゆえ、除外せられそうなれどやはり武蔵野に相違...

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