ブンゴウメール公式ブログ

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2018-05-19

【ブンゴウメール】走れメロス (19/31)

(338字。目安の読了時間:1分) 立ち上る事が出来ぬのだ。 天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。 ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天(いだてん)、ここまで突破して来たメロスよ。 真の勇者、メロスよ。 今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。 愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。 おまえは、稀代(きたい)の不信の人間、まさしく王の...

2018-05-18

【ブンゴウメール】走れメロス (18/31)

(385字。目安の読了時間:1分) 持ちもの全部を置いて行け。」 「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。」 「その、いのちが欲しいのだ。」 「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」  山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒(こんぼう)を振り挙げた。 メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、その...

2018-05-17

【ブンゴウメール】走れメロス (17/31)

(329字。目安の読了時間:1分) 満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻(か)きわけ掻きわけ、めくらめっぽう獅子奮迅の人の子の姿には、神も哀れと思ったか、ついに憐愍(れんびん)を垂れてくれた。 押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。 ありがたい。 メロスは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。 一刻...

2018-05-16

【ブンゴウメール】走れメロス (16/31)

(362字。目安の読了時間:1分) 流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。 メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウスに手を挙げて哀願した。 「ああ、鎮(しず)めたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎて行きます。太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、あの佳い友達が、私のために死ぬのです。」 ...

2018-05-15

【ブンゴウメール】走れメロス (15/31)

(383字。目安の読了時間:1分) 妹たちは、きっと佳い夫婦になるだろう。 私には、いま、なんの気がかりも無い筈だ。 まっすぐに王城に行き着けば、それでよいのだ。 そんなに急ぐ必要も無い。 ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気(のんき)さを取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した。 ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧(わ)いた災難、メロスの足は、はたと、とまっ...

2018-05-14

【ブンゴウメール】走れメロス (14/31)

(376字。目安の読了時間:1分) メロスは、悠々と身仕度をはじめた。 雨も、いくぶん小降りになっている様子である。 身仕度は出来た。 さて、メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。  私は、今宵、殺される。 殺される為に走るのだ。 身代りの友を救う為に走るのだ。 王の奸佞(かんねい)邪智を打ち破る為に走るのだ。 走らなければならぬ。 そうして、私は殺される。 若い時から名...

2018-05-13

【ブンゴウメール】走れメロス (13/31)

(346字。目安の読了時間:1分)  花嫁は、夢見心地で首肯(うなず)いた。 メロスは、それから花婿の肩をたたいて、 「仕度の無いのはお互さまさ。私の家にも、宝といっては、妹と羊だけだ。他には、何も無い。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」  花婿は揉(も)み手して、てれていた。 メロスは笑って村人たちにも会釈(えしゃく)して、宴席から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死...

2018-05-12

【ブンゴウメール】走れメロス (12/31)

(363字。目安の読了時間:1分) ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。 その頃には、雨も小降りになっていよう。 少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。 メロスほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。 今宵呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁に近寄り、 「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっとご免こうむって眠りたい。眼が覚めたら、すぐに市に出かける。大切...

2018-05-11

【ブンゴウメール】走れメロス (11/31)

(367字。目安の読了時間:1分) 新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。 祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺(こら)え、陽気に歌をうたい、手を拍(う)った。 メロスも、満面に喜色を湛(たた)え、しばらくは、王とのあの約束...

2018-05-10

【ブンゴウメール】走れメロス (10/31)

(371字。目安の読了時間:1分) さあ、これから行って、村の人たちに知らせて来い。結婚式は、あすだと。」 メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。 眼が覚めたのは夜だった。 メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。 そうして、少し事情があるから...

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