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すると誰だったかそこに立っていた一人がいきなり僕のポッケットに手をさし込もうとしました。 僕は一生懸命にそうはさせまいとしましたけれども、多勢に無勢で迚(とて)も叶(かな)いません。 僕のポッケットの中からは、見る見るマーブル球(今のビー球のことです)や鉛のメンコなどと一緒に二つの絵具のかたまりが掴み出されてしまいました。 「それ見ろ」といわんばかりの顔をして子供達は憎らしそうに僕の顔を睨(にら)みつけました。 僕の体はひとりでにぶるぶる震えて、眼の前が真暗になるようでした。 いいお天気なのに、みんな休時間を面白そうに遊び廻っているのに、僕だけは本当に心からしおれてしまいました。 あんなことをなぜしてしまったんだろう。 取りかえしのつかないことになってしまった。 もう僕は駄目だ。 そんなに思うと弱虫だった僕は淋(さび)しく悲しくなって来て、しくしくと泣き出してしまいました。 「泣いておどかしたって駄目だよ。」とよく出来る大きな子が馬鹿にするような憎みきったような声で言って、動くまいとする僕をみんなで寄ってたかって二階に引張って行こうとしました。 僕は出来るだけ行くまいとしたけれどもとうとう力まかせに引きずられて階子段を登らせられてしまいました。
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